「ライフエンディング×IT」領域で事業拡大を目指す東証1部上場企業
株式会社鎌倉新書 代表取締役社長 相木 孝仁 様
Q.鎌倉新書に入社し、社長就任に至るまでの経緯は?
外資系コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーなどを経て楽天に入社し、常務執行役員としてデジタルコンテンツ事業群を統括してきた。楽天では通信会社のフュージョン・コミュニケーションズ(現・楽天コミュニケーションズ)の立て直しをはじめ、買収したKobo(電子書籍)やViber(メッセージングアプリ)などコンテンツ事業を手掛けてきた。
Viberの会長として、同社が拠点を置くイスラエルに赴任していた際、イスラエルの人々の独特な死生観に触れた。イスラエルでは、「自分たちがいる場所は安泰ではない。いつ戦争が始まってもおかしくない。いつ死ぬか分からない」と考えている人が多く、日本人よりも「死」を身近なものとして捉えていると感じた。
「生と死」に関わる事業領域は、まだ大きなイノベーションが起きておらず、新しい発想や科学的視点が不謹慎と捉えられがちだ。しかし、それはある意味思考停止している証拠であり、逆に消費者目線で新しい付加価値を生み出せるチャンスがあるのではないかと考えた。
以前から鎌倉新書のことは知っており、ユニークで成長余地の大きい会社だと思っていた。そこで、当時社長だった清水に連絡をして会いに行った。折しも清水は、株式公開により、「会社の成長ステージが変わったのであれば、マネジメントも変えていかなくてはならない」という考えを抱いており、新たな成長ステージへ進むために共に歩むマネジメント人材を探していた時期だった。お互いの思惑が一致して入社することになった。
Q.どのような会社なのか?
鎌倉新書は、1984年に仏壇仏具業界向け書籍の出版社として創業した。2000年以降、「いい葬儀」、「いいお墓」、「いい仏壇」など、供養業界・ライフエンディング業界におけるマッチングサービスを展開してきた。高齢化によって「終活」に関心が高まる中、これにインターネットを組み合わせることで独自の事業モデルを構築してきた。
Q.鎌倉新書に入社してから手掛けたことは?
まずは、私自身が、仲間として受け入れてもらうこと、社員との信頼関係を築くことに注力した。全社員と個別に面談し、社員の話に耳を傾け、会社が進むべき方向性について、自らの仮説を検証していった。その結果、「ライフエンディングという領域で、IT・WEBを活用した事業を展開する」というこれまでの基本路線は変える必要がないという結論に至った。その一方、事業ドメインについては再定義を行った。元々、「葬儀」、「お墓」、「仏壇」をテーマとするWEBサービスを展開していたが、それに限定せず、「高齢者と彼らの家族が必要とするサービスを、主にネットを通じて提供していく」という形に事業ドメインを再定義し、すでに具体的なアクションを取り始めている。
Q.今後のビジョンは?
世界でも類を見ない高齢化社会を迎える日本では、人口減少と共に多くの産業の衰退が予想されている。しかし、その中で、確実に成長が約束されているのが「ライフエンディング産業」だ。約3.8兆円にも及ぶ巨⼤な個⼈消費市場であり、ビジネスチャンスに溢れている。当社は、このライフエンディング領域におけるWEBプラットフォーム型サービスで現在業界トップシェアだが、今後さらなる優位性を築きあげ、積極的なM&Aや新規事業開発を行っていきたい。市場も企業も人も成長する中、鎌倉新書の事業を最低でも10倍にする。それはお客様からいただく「ありがとう」の数を最低10倍にするということでもある。
Q.そのビジョンを実現するための今後の事業ドメイン、サービスは?
「高齢者と彼らの家族が必要とするサービス」という事業ドメインで考えると、当社が手掛けられるサービスは山のようにある。また、日本中、世界中のどの会社よりも、高齢者や彼らの家族がやりたいこと、求めていることについて深く理解している会社になろうと考えている。そうなれば、人が定年退職したらやりたいこと、70代になったらやりたいこと、80代になった親を持つ方がやりたいことなど、顧客層のニーズに合わせていくらでも新しいサービスを作ることができる。
すでに「遺産相続」、「遺品整理」、「介護・看取り」などのサービスを立ち上げた。お別れ会・偲ぶ会の開催や自分史の書籍制作を請け負う「マイヒストリー」事業も開始した。
これからもテクノロジーを活用して、お客様が求める情報を上手く整理し、インターネットを通じて提供していくというビジネスモデルを展開していく。
Q.今後の課題は?
まだこの業界で当社が獲得しているシェアはわずか1%程度に過ぎない。既存サービスのシェアも大いに伸ばせる余地がある。そのための課題の一つとして、サービス間の連携がある。現在、「いい葬儀」、「いいお墓」、「いい仏壇」の各サービスを利用された顧客の情報が内部で共有化されていないため、機会損失が生じている。サイトごとに改良を積み重ねてきた一方で、サイト間の連携は十分ではなかった。今後、サイト間の連携を行い、IDによる顧客情報の有効活用が進めば、さらに成長できると考えている。また、多数の取引先を全国的に開拓してきた実績はあるものの、会社やサービスの知名度も、まだ高いとはいえない。今後、広告宣伝やブランディングも強化していきたい。
Q.組織の特徴、社風は?
人材の年齢層、職能、雇用形態は多様化している。また、現在、月に3~5人ほど採用しているので、組織が急速に拡大しているという実感がある。社内の雰囲気はアットホームでとても居心地がよい。社員のまっすぐさが表れた珍しい社風であり、退職者は少ない。
また、社内交流も活発だ。例えば、歓迎会一つとっても単なる飲み会ではなく、準備に時間をかけ知恵を絞って創意工夫をこらす。社員の家族を呼んで行う料理大会やファミリーデイにも労力を割いている。この社内交流は『AtoM(エイトム)』と名付け長年実施しているプロジェクトだ。社員数が20人を超えたときに始まったが、仕事以外のことでも家族のようなつながりを醸成し、お節介なくらい社内交流を盛んにすることで、人材の成長や自立心、協業のしやすさ、企画する力を育てるきっかけづくりになることを意図している。
このような企業風土を生かし、社員のまっすぐさや思いやりという素晴らしい点を損うことなく、決めた成長目標は必達する。そんな強い組織を作っていきたい。
会社概要
会社名 | 株式会社鎌倉新書 |
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事業内容 | ・ライフエンディングサービス事業(ライフエンディングに関わるサイト運営・情報サービスの提供) ・ライフエンディング関連書籍出版事業(「月刊『仏事』」他) |
代表者名 | 相木 孝仁 |
代表プロフィール | 1972年⽣まれ、明治⼤学政治経済学部卒業。日本電信電話株式会社(NTT)に入社、私費でコーネル⼤学経営⼤学院にてMBA取得。ベイン・アンド・カンパニーを経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(TSUTAYA Online)にてオンライン会員基盤を倍以上に成⻑させた後、ベイン・アンド・カンパニーに復帰し、マネージャーとしてBest Project Award、ならびに、Coach of the yearを受賞。 2007年に縁あって三木谷氏と出会い、楽天株式会社に入社。楽天では最年少(当時)で常務執⾏役員に就任。フュージョン・コミュニケーションズ株式会社代表取締役社⻑、Rakuten Kobo Inc CEO、Viber Media Chairman、楽天株式会社カンパニープレジデント兼楽天ヨーロッパCEOなどを歴任。1,000億円、2,000⼈のマネジメントを経験。 2017年4月、取締役副社⻑として株式会社鎌倉新書へ入社。9月に代表取締役社⻑就任。 |
沿革 | 1984年 株式会社鎌倉新書設立。 1986年 中央区日本橋浜町に本社を移転。 1998年 中央区日本橋久松町に本社を移転。 2000年 全国の葬儀社検索、お荘子のマナーや葬儀に関する情報サイト「いい葬儀」を開始。 2001年 「月刊『仏事』」創刊号発売。 2003年 霊園・墓地・お墓さがしの総合サイト「いいお墓」を開始。 2003年 仏壇と仏壇店さがしに関するサイト「いい仏壇」を開始。 2003年 中央区日本橋大伝馬町に本社を移転。 2014年 中央区日本橋本石町に本社を移転。 2014年 ヤフー株式会社の新サービス「Yahoo!エンディング」サービスを開始。 2015年 東京証券取引所マザーズに上場。 2015年 Storyサービス開始 2015年 中央区八重洲に本社を移転。 2017年 東京証券取引所マザーズから第一部へ市場変更 |
本社所在地 | 〒103-0028 東京都中央区八重洲1丁目6-6 八重洲センタービル7F |
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