地域の発展を追求する材木と建材を扱う専門商社

株式会社鈴三材木店 代表取締役 鈴木 諭 様

Q.社長就任までの経緯は?

小・中学校の頃から、好きな野球ではキャプテン、学校では学級委員長を経験し、リーダーシップを発揮する機会に恵まれていた。大学の進路決定時に、父親から海外の大学へ進学することを勧められた。今となっては、イギリスで過ごした4年間の学生生活が人生のターニングポイントとなった。日本にいた頃は、自分自身のことを知っている仲間が周りにおり、それが当たり前だと思っていたが、イギリスに行くと、誰も自分のことを知らないため、相互尊重や協調なくして人と関わることができないことを初めて経験した。

帰国後、建築資材商社のナイス株式会社で4年間、営業の仕事を経験し、実家へ戻ってきたわけだが、ナイス株式会社の平田社長から同じ2代目社長としてアドバイスをいただいた。それは、「2代目が帰ってきて喜ぶ従業員は一人もいない。社内のあらゆる問題点が見えると思うが、決して否定してはいけない。問題点があっても1年はぐっと我慢しろ。メモに残しておき、従業員の信頼を得られる1年後から取りかかれ」というものだった。実家へ戻った後は、平田社長の教えを忠実に守り、入社2年後には常務取締役に就任することとなった。父親からは入社5年間は社長にしないと言われていたが、入社4年目に役員から社長交代を勧められ、2代目として就任するに至った。当時を振り返ると、イギリスで学んだ「相互尊重・協調」や、平田社長から教えて頂いたことが活きていると感じる。

Q.どのような理念・想いで事業をやっているのか?

父親から引き継いだ会社を、2代目として更に良い会社に仕上げ、次なる後継者に引き継ぐことが私の役割だと考えている。そのために、「地域など周りがよくなった結果、自分たちも良くなる」という考え方を大切にしている。当社のような材木屋は、住宅を建てるお客様がいなければ成り立たない。人はみな家族をもっと幸せにしたいという想いを持って家を建てているので、まずは、お客様のその想いに応えたい。また、地元の産業が良くなり、地元の人々が豊かになることに貢献するために、「遠州バザール」というイベントを開催している。

Q.事業展開の状況は?

住宅に関連するあらゆる資材を、地元の工務店やハウスメーカーに供給している。一般的な材木屋とは異なり、木材だけでなく、キッチン、ユニットバス、太陽光発電機材などの建材も扱っているのが当社の特徴だ。

木材事業と建材事業の比率は、12年前は木材が7割弱、建材が3割だったが、現在では木材と建材でおおよそ半々の比率となっている。売上規模では、12年前は25億円だったのに対し、現在では36億円にまで拡大している。

また、木材については、地元の「天竜材」に力を入れており、天竜材の取扱高は全体の約25%、残りは国産材が25%、外国産材が50%となっている。天竜材の需要は、まだまだ開拓できる余地が大きいと考えている。

Q.なぜ天竜材にこだわるようになったのか?

私の父が「天竜木材産地協同組合」の会長に就任したことがきっかけだ。当時は、一軒屋を建てるために地元の天竜材を使うと、外国産材を使うよりも30万円高くついていた。消費者は安価な方を選択するため、天竜材が活用されにくい状況であった。父は、当時の天竜市長に対し「天竜材を活用した住宅の建築費用に補助金を出してくれないか」と提案し、承諾されたことが、当社が天竜材を扱うきっかけとなった。

その後、天竜市は浜松市に合併されたものの、浜松市は天竜市が始めた天竜材の補助金制度を継続してくれたため、補助金の対象が浜松市全域に広がった。その結果として、当社は天竜材を最も取り扱う会社になることができた。現在では、天竜材はFSCという国際認証を取得するまでに至り、今後の更なる流通拡大が期待されている。

Q.地域に貢献する「遠州バザール」とは?

「遠州バザール」は、衣・食・住に関わる地元の中小企業が出展するイベントで、2日間で3万名が集まる一大イベントだ。「家族の笑顔にLOVE & THANK YOU」をコンセプトとし、私自ら「遠州バザール」の実行委員長となって、地元の人々に協力を訴えかけている。出展企業は、地元の農家や加工食品会社、小物雑貨店など他業種に渡り、200社ほど集めている。

また、「遠州バザール」は、未来ある子供たちに夢や自尊心を与えることにも貢献していきたい。最近は、自分をネガティブに捉えがちな子供が多い。私たちは、地元郵便局の協力のもと、子供たちが10年後の自分宛に届く手紙を作り、ふと自分を見失ってしまいそうな時に当時の手紙を見て、初心を忘れずに夢を持ち続けて欲しいと願っている。

当社としては、「遠州バザール」を始めたことで、新卒採用が大きく変わった。当社はBtoBの会社であるために、就活生の親世代に対する認知度が低いという問題を抱えていたのだが、地域密着型のイベントを開催し続けることで、就活生の親世代への認知度が高まってきていると感じる。

更に、3万名も集まる一大イベントとなったため、将来的には彼らを読者にしたメディアを展開していきたい。3万名もの読者に対して訴求力のあるメディアを持つことができれば、地元企業はもちろんのこと、行政からも魅力的なメディアに映るのではないか。このように、地域を豊かにすることに貢献することで、自分たちも良くなっていきたいと考え、「遠州バザール」には力を入れている。

Q.なぜ、地域社会や子供たちの未来のためにという考え方をするようになったのか?

やはり、父の影響が大きいと思う。会社の経営を行うにあたり最も重要なのは、「ブレない軸を持つこと」だと考えている。経営理念を創り、言語化したことが、私が社長に就任してからの一番の功績だと考えている。また、理念を策定する上で、稲盛さんや松下幸之助さんなどの考えを勉強し、皆に共通しているのは「周囲への感謝」や「周囲を良くしたい。雇用を大事にしたい」などの考え方だと気付いた。また、ナイスの平田社長から「経営者たるもの、自分で全ての意思決定に責任を持て」と助言を頂いたことにより、明確な判断基準を設けることにより、あらゆる経営判断や意思決定を一秒で出来るようにしようと決めた。その軸になるのが経営理念だと考えている。

Q.今後のビジョン、戦略は?

現在は52期目に当たるが、50から60期に向けてのビジョンとしては、「売上60億円・社員66名・経常利益3億円」を掲げている。そのための戦略として、一つは、異業種と連携しながら木材の新商品開発に注力していく。今後は、住宅分野だけでなく、例えば、原油の代替品としても木材を積極的に活用していくことなどを目指したい。二つ目は、天竜材のブランディングだ。天竜材の見せ方を変え、付加価値を高めることで、高価でも使いたいと思われるような木材にしていきたい。三つ目は、住宅において商品や素材だけを提供するのでなく、高い性能を価値として提供していくこと。気密性、断熱性、省エネ効果などの性能をしっかり検証した上で納品していきたい。四つ目は、マンションやリノベーション市場への参入も検討している。五つ目は、大規模建築に木材を活用して頂くことにも挑戦したい。

Q.売上・利益以外のビジョンは?

「脱・材木屋」を目指したい。そのために、社内ベンチャーを立ち上げたいと考えている。当社は、「遠州バザール」など新しい取り組みを続けているが、依然として、材木屋は「ダサい・汗くさい・怖い」など、ネガティブなイメージを払拭しきれていない。今までの材木屋のイメージをガラッと変えるような取り組みが、日本の林業を守っていくためにも必要だと考えている。

Q.今後の課題は?

社員が若いということだ。組織が若いため、勢いはあるが、細かい規律を導入する必要があると考えている。優先順位が曖昧になるなどルーズな面が見られるため、解決策が必要だ。具体的な取り組みとしては、PDCAの徹底である。決めたことを決めた通りに実行し、結果を検証し、再現性が生まれるよう仕組みに落とし込んでいきたい。

会社概要

会社名株式会社鈴三材木店
事業内容・建築用木材、建築用合板の仕入販売
・構造材、端柄材、合板類のプレカット加工
・造作無垢材の加工
・各メーカー内装建材、住宅設備機器、サッシの仕入販売
・屋根、外壁、太陽光発電の施工販売
・遠州バザール企画運営
・フラット35取次業務
・一般住宅の設計、施工管理業務
代表者名鈴木 諭
代表プロフィール昭和53年4月2日生まれ 39歳(双子) 学生時代は野球に没頭する毎日。中学生時代は生徒会長と野球部キャプテンを兼任し、静岡県大会優勝に導いた。高校時代は双子のバッテリーとして県大会に出場。英国の大学卒業後、建材商社で営業4年の経験を経て、株式会社鈴三材木店へ入社。入社4年後の31歳で代表取締役に就任。浜松地域FSC・CLT利活用推進協議会連携部会長、遠州バザール実行委員会実行委員長、天竜プレカット事業協同組合副理事長、静岡県木の住まい支援協会会長、NPO法人出世の街浜松プロジェクト理事等を務め、木材業界にとどまらず地域の一次産業と中小企業の連携と発展に貢献。『未来が今を肯定する』をキーワードに様々な産業と連携し、民間主導で新しい未来を創っていく活動に邁進している。
沿革昭和37年 創業者 鈴木良三(現 会長)により創業
昭和41年 資本金300万円で法人化
平成21年 鈴木 諭 代表取締役に就任
本社所在地〒434-0041
静岡県浜松市浜北区平口5584-12
URLhttp://suzusan.jp/