メーカーのM&A、IoT・AI事業を強化する機械の専門商社
三栄商事株式会社 代表取締役社長 後藤 正幸 様
Q.社長就任までの経緯は?
2000年に慶応大学を卒業後、米国・コロラド州立大学に留学し、2年間International Affairs(国際関係学)を学んだ。米国の大学を卒業すると、1年間の就労ビザを獲得できるため、オークマ(株)の米国工場で半年間勤務した。2003年から1年半はオークマの嘱託社員として日本で働いた。2005年1月にトヨタ自動車への出向を経て、同年10月に常務として当社へ入社した。常務から専務を経て、2013年6月に社長に就任した。
Q.入社した時の問題意識は?
入社当時の会社の印象は、個々が勝手に仕事をしており、部署間・社員間のコミュニケーションが不十分で、個人商店の集まりだと感じた。会社としてこれでいいのかという疑問を抱いた。その矢先に、社内で大きな問題が起こったのだが、課長・部長は何も把握できておらず、その時に、会社を変えなくてはならないと決心した。コミュニケーションの軽薄さが問題だったと考え、社員のほぼ全員と飲みに行ったり、顧客への同行を行ったりした。
社内の改革がひと段落した時に、リーマンショックに見舞われ、売上が3分の1に激減した。当時は99%がルート営業だったが、私はリーマンショック前から新規顧客の開拓を主導してきた。その時に開拓した顧客が現在の売上約5%を占めている。
このように、社内で着実に成果を上げ、社員から認められる声が増えてきた。私も若いうちから社長をやりたいと宣言していたこともあり、2013年に36歳という若さではあったが、社長に就任した。
Q.社長就任後に取り組んだことは?
私が社長に就任する以前は、部長も自ら顧客を担当しており、部の営業が担当している全ての顧客について、部長が十分に把握できていなかった。そこで私は、社長就任と同時期に、部長は自ら顧客を担当せず、部のマネジメントに徹するように改革を進めた。一方、それによって、現場社員の人手不足が起こったため、新卒採用に力を入れるようになった。
また、社長就任時に「20年で社長を辞める」と宣言した。これには理由が2つあり、一つは、20年以上社長業をやり続けると新しいことに取り組まなくなると考えているから。二つ目は、オーナー企業ではあるものの、全ての社員に社長にチャレンジして欲しいからだ。私の社長としてのミッションは、次期後継者に誰が就こうとも倒産しない会社にすることだ。
Q.現在の事業内容、強みは?
機械の専門商社として、工作機械・測定機・掘削工具を取り扱っている。強みとしては、一つは、創業70年で培った経験・ノウハウを基に、良い顧客・仕入れ先に恵まれていること。二つ目に、基本的に会社が好きな社員が残ってくれており、組織全体が若いこと。社員の平均年齢は33歳と若く、私もこの業界の経営者としてはかなり若い方だ。三つ目は、新入社員による新規顧客開拓を、2015年から始めているが、訪問先200件のうち約10%が新規顧客となっており、期待以上の成果が上がっていることだ。
(※上記写真は、同社が取り扱っているオークマ社の製品です。)
Q.浜名エンジニアリングをグループ化した理由は?
2013年に、自動運搬装置メーカーである「浜名エンジニアリング」のM&Aを行った。今後は、商社としての枠にとらわれず、新たな付加価値をお客様に提供していくために、メーカーのグループ化を進めていきたいと考えている。浜名エンジニアリングのグループ化は、その一環だ。
Q.プロキャストをグループ化した理由は?
2017年に、工作機械の稼働状況を監視するシステムなどを手掛ける「プロキャスト」のM&Aを行い、IoT・AI分野の強化を進めている。M&Aのニュースが新聞などに掲載されると、様々な所から話が舞い込むようになった。
現在、東大発のAIベンチャーとも共同研究を進めているが、私は、現場の働く人々の時間を効率良く使い生産性を高めるために、AIを活用したいと考えている。これには、当社が掲げる経営理念「三栄:3つの幸せを実現できる会社」の考え方が深く関わっている。当社では、お客様・仕入れ先様・社員の三方が栄えることを謳っている。この三方を幸せにするために、いかにAIを使うかを追求していきたい。
Q.今後のビジョンは?
まずは、私がいついなくなっても会社が永遠に続く仕組みをいち早く構築したい。これまでは、トップダウンで進めてきたが、現在はボトムアップ型の意識改革を行っている。社員一人ひとりが自ら考え周りを巻き込んで行動できるようになってもらいたい。そのために、面談の中で、この1年間何に力を入れてやるかを自ら決めてもらい、そこで宣言したことに徹底的にコミットしてもらうことにしている。
二つ目は、報酬の面でも、社員が100%納得できる会社を目指したい。そのために、給与体系およびボーナス査定制度の見直しを進めている。何を達成すればワンランク上の仕事に挑戦できるかを明確にし、仕事における職能を誰が見ても一目瞭然な状態にしていきたい。
三つ目は、グループ内にメーカーを5社構築したい。そのための方法の1つとしてM&Aを考えている。常にアンテナを張り巡らし、面白いメーカーがないか探している。当社には、1000社の仕入れ先、1000社の顧客ネットワークがあり、その中にもグループとして連携していけるメーカーがあるのではないかと考えている。
四つ目は、グループ化したプロキャストの売上を、現在の1.5億円から、今後5年間で3倍にしたい。
Q.求める人物像は?
何かで突き抜けている人、変わっている人、自分の意見がはっきり言える人を求めている。また、特定の分野で私よりも優秀な人材が欲しい。それは、コミュニケーション力、語学力など何でもいい。
女性社員も積極的に採用したい。今年初めて、女性の営業職を採用した。女性社員を採用したい理由は、男性と違う視点を持っているからだ。
そして、入社後は、自分の得意なことを伸ばしていき、周りから尊敬される人になって欲しい。そのためには、自分の強みに気づく必要がある。
Q.当社で働く魅力は?
当社の魅力は、やりたいことがやれる会社であることだ。展示会の準備も、入社3年目と4年目の社員に任せており、社長の私はほとんど関与していない。当社の方針として、ボトムアップ型の組織を目指しているので、自らどんどん手を上げてチャレンジしてもらいたい。また、若い社員が多いので、社員全員が参加する飲み会やクラブ活動、社員旅行を用意している。社長との距離が近いことも魅力の一つだろう。
会社概要
会社名 | 三栄商事株式会社 |
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事業内容 | ・工作機械、鍛圧機械、産業機械及び関連商品の販売 ・上記に関連する試験機、測定器の販売 ・切削工具、計測工具の販売 ・その他、工場にて必要な商品の販売 ・上記の機械、機器類の輸出入及び代理業務 |
代表者名 | 後藤 正幸 |
代表プロフィール | 2000年に慶應義塾大学卒業後、コロラド州立大学のインターナショナルアフェアーズへ進学。卒業後、オークマ、トヨタを経て、2005年三栄商事へ入社。2013年、代表取締役社長へ就任。 |
沿革 | 1946年 名古屋市東区松軒町にて太平商会を創業 1950年 名古屋市東区平田町に三栄商事を設立 1995年 海外関連会社 SIAM SAN-EI CO., LTD. タイ国設立 2011年 海外関連合弁会社 昆山栄日商貿有限公司(中国)設立 2013年 浜名エンジニアリング株式会社をグループ会社化 2013年 PT. SAN-EI TRADING INDONESIA設立 2016年 プロキャスト株式会社をグループ会社化 |
本社所在地 | 〒461-0005 愛知県名古屋市東区東桜二丁目17番6号 |
URL | http://www.sanei-trading.co.jp/ |