Q.起業するまでの経緯は？

まず、時計販売の「ウォッチマン」へ入社したが、同社が、バブル期にゲームセンター会社を新設することになり出向、店舗を任されるに至る。その後、不動産仲介会社の「ミニミニ」へ転職し、新人の時に全体朝礼で「No. 1社員になる」と宣言。No.1になるために、常に一つ上の役職を見据えて仕事をしていくことを常に心掛けた。例えば、副店長の時は店長の仕事ぶりを観察し、仕事のやり方や内容を貪欲に吸収していった。

ミニミニ時代に知り合った経営者のお客様から、経営のイロハを教えて頂き、会社経営に興味を持つようになった。そして、これまでの経験を生かし、2006年に不動産仲介会社として起業した。起業当初は、業務提携によって「ヘヤギメ！」の屋号で業務を行い、現在は、ホールディングス化を目指し、「部屋セレブ」という自社ブランドに称号を変更して営業を行っている。

Q.なぜ、競争が厳しい不動産仲介で起業しようと思ったのか？

ミニミニに在籍していた当時、私は「賃貸仲介」、「管理獲得」、「建築推進」の全ての分野で全国1番の営業成績を獲得しており、自信が満ち溢れていた。そのため当時、自分にできない理由などないと思い込んでいたため、不動産仲介で起業することに不安はなかった。

Q.どのような事業を展開しているのか？

不動産賃貸の「部屋セレブ」は、名古屋市内を中心に8店舗の路面店を構え、各店舗常時8万件の物件を取扱っている。2006年末の会社設立以来、4万件をこえる賃貸契約実績がある。

高級デザイナーズ専門の賃貸「リミテッド名古屋」は、名古屋駅前に店舗を構える高級デザイナーズマンション専門の賃貸事業。40万弱ある不動産から日々厳選した5千戸を取扱い、2013年末の事業開始から3年半で2千戸以上の契約実績がある。

「部屋セレブ法人営業部」は、法人契約に特化した不動産賃貸事業。部屋セレブ店舗とは別に、企業様の社宅斡旋業務のみを行う専門事業で、現在300社以上の企業様の社宅斡旋を行っている。

「不動産販売S-point」は不動産の売買に特化した不動産売買事業。売却の為の物件査定、購入希望者探し、諸手続き業務、また購入を希望なさる方への情報収集、物件見学、購入時のサポートを行う。

「不動産管理事業（プロパティマネジメント）」は、空室でお悩み・家賃滞納が心配なオーナー様の為の不動産の総合管理を行う。管理物件の入居率が平均97%と愛知県の平均入居率84%に比べ、かなり高い入居率実績を継続している。

また、デジタルコンテンツを手掛ける「S-DREAMS」という子会社を持っており、不動産の枠を越えたweb、紙媒体、映像などのデジタル、企画製作を行っている。

Q.なぜ成長できているのか？ターニングポイントは？

まず一つは、マンションオーナー様との出会いだ。当時は、創業1年目で、生きるか死ぬかの大苦戦をしていた。「ここでお客様を取り逃がしては絶対にならない」と意気込み、資料を作り込んで、熱心にプレゼンしたところ、私のことを信頼していただき、700戸の大型マンションの管理を任せてもらうことができた。

二つ目は、日本青年会議所（JC）の仲間からの紹介で、優良物件を購入することができたこと。購入時は、リーマンショック直後だったため、融資の審査が通らないリスクもあったが、私を担当した銀行マンが、他行からも一目置かれるほどの敏腕だったため、融資を受け、優良物件を購入することができた。

三つ目は、アドバイザーとして、ミニミニの元社長に支援いただいていることだ。その方には、ミニミニ時代に、とても可愛がっていただいた。私は100名程度の組織のマネジメント経験はあったが、500名以上の組織のマネジメントは経験がなく、全くイメージできなかったため、彼がアドバイザーとして後方支援いただいていることは、大きな安心に繋がっている。

四つ目は、人材育成会社として有名な「新規開拓」の朝倉千恵子社長と出会う縁があり、社員のやる気を底上げするための研修を導入したこと。早朝7時から2時間の研修を10回続けた。この研修は、社員のモチベーションアップに繋がり、結果として業績アップにも貢献している。

Q.出店戦略は？

第1号店は、私がサラリーマン時代から長年地盤にしていた、中村公園に出店した。その後、名古屋駅、栄、大須などに出店した。人通りが多いエリア、地下鉄の乗降客数が多いエリアに重点的に出店している。

Q.組織としての強みは？

最大の強みは、スピード力があることだ。当社の社員は皆、行動が早く、思ったことをすぐやる社風が醸成されている。また、会社として社員への強い想いがある。いかに社員に喜んで頂くかを考えており、そのためのイベントには力を入れている。また、社員を表彰する全体朝礼を毎月ホテルで開催している。

Q.今後のビジョンは？

5年後に100棟の物件所有、年商100億円を目指したい。それが実現できれば、名古屋の不動産会社として目立つことができ、更に新規物件が舞い込み、優秀な社員も採用することができる。そして、10年後には社長を交代し、ホールディングス体制に移行していきたい。

Q.今後の課題は？

最大の課題は、意欲ある人材の定着化だ。営業職の評価制度は明確で、成長と評価は連動しているが、事務職は成長を実感しづらい。どの職種、どの階層の社員にも一つ上のポジションを目指してもらえるようなキャリアアップ体制を構築したい。

人口減少・高齢化に応じたビジネス展開も今後の課題となる。当社は、高齢者向けの事業を手掛けていないが、健康なアクティブ・シニア向けマンションには興味がある。ただし、シニアのニーズが分からないため、手をつけられずにいるのが現状だ。