アジアの人材育成を追求する日本最大の外装工事会社

南富士株式会社 代表取締役社長 杉山 拓 様

Q.事業展開の状況は?

大きく2つの事業があり、一つは総合外装事業である。主に、大手ハウスメーカーから案件をもらい、新築戸建て住宅の外壁や屋根などの外装の工事を行っている。毎月約1000棟の工事を手がけ、当社は日本最大の外装工事会社となっている。本社は三島だが、大半が首都圏からの案件である。もう一つが、アジア人材活用事業である。中国・ベトナム・インドネシアに拠点を構え、現地の人材を育成し日系企業に紹介している。これら二つの事業を柱とし、年商約60億円・従業員100名・職人500名規模の会社である。

Q.「日本最大の外装工事会社」になれた理由は?

そもそも、個人の職人が多い外装工事業界の中で、当社のように組織的に事業を展開している企業は多くはない。日本最大の外装工事会社になれた理由としては、一つは、各営業所に権限を委譲し、お客様・職人に対し地域ごとに合わせた柔軟な対応ができていること。二つ目は、人を育てることに本気でコミットしていること。2017年4月には「ルーフ・マイスター・スクール」を立ち上げ、引きこもりから抜け出せない18〜35歳の若者を対象に、有給型の職業学校を開始した。三つ目は、ハウスメーカーから信頼される「施工力」を有していること。500名の職人を抱えているため、あらゆるニーズに対応することができるのだ。

Q.なぜアジアで人材育成を手掛けるようになったのか?

約40年前の中国と国交が回復した頃、現会長が人づくりの一環で現地に行ったことがきっかけである。また、私自身も1996年から中国に留学しており、現地には可能性に溢れる有望な人材が数多くいたが、活躍できる機会が少ないことに気が付いた。そのような現実を目の当たりにし、人材が成長するためには、「3割の天性、2割の教育、残り5割は環境」が必要であると考えるようになった。一方で、中国に進出している日系企業が人材面で苦戦している中で、日系企業が現地で成功する秘訣は「任せられる右腕を育てること」であると考え、人材育成をスタートした。

Q.アジア人材の育成はどのように行っているのか?

2005年に「グローバル・マネジメント・カレッジ(GMC)」という世界で活躍する経営人材を養成する学校を設立した。世界のトップ大学から受講生を厳選しており、「気づき」を促す実践重視の教育を通じて、リーダー人材の育成を手がけている。2005年当時は中国で実施していたが、現在はベトナムで展開している。

GMCでは、受講生が企業の課題解決を行うという実践的なプロジェクトを行っている。また、生徒が提案した解決策を企業が承諾すれば、クライアント企業の社員と一体となり実行まで深く関わっていく。中には、そのまま社員として雇用された生徒もいる。

GMCは全て無料で提供しているが、受講生は厳選している。当社が考える有望な人材の定義は、「素直な心」、「柔らかい頭」、「失敗を恐れない行動力」の3つの要素を兼ね備えている人材であり、GMCはこのような人材を厳選して受け入れている。

また、リーダー人材だけでなく、現場で働く人材を育成する「マイスター・スクール」も現地の大学と連携して展開している。当社のスクールでは、教える先生は存在せず、すべて生徒ひとりひとりが目標を掲げ、計画を立て、勉強するスタイルを重視している。

Q.企業経営の視点から、アジア人材活用事業はどのような形で見返りがあるのか?

当社を取り巻く市場環境として、住宅業界では、10年後に市場が2/3に縮小すると言われている。その中で生き残るには、「人材育成」と「海外展開」が重要な柱になると考えている。確かにビジネスの観点から見ると、収益を生む事業とは言えないが、我々が教育に携わった経営リーダー人材とのネットワークを構築し、その先の大きなビジョンを実現していきたいと考えている。

また、当社では、具体的な経営指標や目に見える成果を追うだけではなく、無形資産の価値を重視している。そのために、「人づくり」という見えない価値の最大化にコミットしている。新たに立ち上げた「Japan Asia China協議会(JAC協議会)」には、経済産業省や竹中平蔵氏に応援いただくことができた。当社の「人づくり」に共感いただけたからこそ、国をも巻き込んだプロジェクトができていると考えている。

Q.今後のビジョンは?

まず外装事業について大きく4つある。まずは、国内におけるリフォーム需要やスマートエネルギー需要に対応していきたい。二つ目は、国内市場だけでなく、海外市場にも積極的に進出していきたい。インドネシアにはすでに進出している。三つ目は、「人づくり」に更に磨きをかけていきたい。建築業界は人材不足であるため、職人を育てることが必要だ。そのために、国内外で職人の人材育成スクールには注力していく。四つ目は、IT化を推進し業務効率を上げていきたい。建築業界はIT化が遅れているが、タブレット端末やクラウドサービスを活用し働き方を変えていく。また、人材事業については、「Asia Intelligent Cloud(ALC)」のネットワークを構築し、国籍や業界の垣根を超えたオープン・イノベーションを巻き起こしていきたい。

Q.今後の課題は?

一つは、労働生産性を高めることだ。そのためにIT化を推進していきたい。建築業界では今でもFAXでのやり取りが多かったが、資料をクラウド化し、どこでも見ることができるようにしていく。二つ目は、「人づくり」だ。お客様から選ばれる会社となるべく、更なる成長を促す環境が必要だと考えている。三つ目は、スクール事業で収益の出せる体制を整えることだ。現在は中国でコンサルティング事業を付随サービスとして提供しているが、これを東南アジアにも拡大していきたい。

Q.採用方針は?

IT化やグローバル化により急速な変化を続ける現代社会において、「自ら考え行動する力」が最も求められている。従来の価値観、成功体験に習うだけでは通用しないからだ。

当社では、如何なる時代が来ても「考えられる」「新たな価値を生み出せる」人材を輩出することを目標とし、2つの事を基本に採用・育成を行っている。

一つ目は現在の能力よりも「変化力」を重視して採用すること。二つ目は若いうちから実践の「チャンス」を与え育てることである。これまでにも20代で所長になり、独自の手法でトップクラスの成績を挙げている者や、入社直後にマレーシアで日系企業の工場改革に従事、その後中国で人材育成やコンサルタント業を経験し、今はベトナムで学校運営の責任者を任されている者もいる。「人づくり」という共通理念の元、多種多様な人材が会社・社会に活気を与えてくれることを期待しているし、そういった人材を輩出し続けられる企業でありたいと考えている。

会社概要

会社名南富士株式会社
事業内容・総合外装事業
・アジア人財育成&活用事業
代表者名杉山 拓
代表プロフィール復旦大学大学院を修了。中国で20年に渡り人材育成や経営コンサルティングに従事。製造から小売・サービスに至るまで約800社の課題解決を行って来た。西安交通大学、ハノイ工業大学などで客員教授も務める。2015年より南富士株式会社 日本本社の社長に就任
沿革1944年 杉山製材 (南富士の前身) 創業
1970年 南富士産業株式会社設立
2000年 職人養成学校 … 南富士屋根外壁職人学校
2005年 Global Management College Chinaスタート2009 職前訓練校(中国武漢市)
2009年 職前訓練校(中国武漢市)
2013年 JAC協議会(日本・アジア・中国の産学官連携の会)
2013年 Global Management College Indonesia 開校
2014年 ベトナムマイスタースクール開校
2014年 Global Management College Vietnam 開校
2015年 Asia Management Center 設立 (ベトナムNo.1、貿易大学との提携開始)
本社所在地〒411-0045
静岡県三島市萩65-1
URLhttp://www.minamifuji.com/