東海を地盤に30店舗以上運営、リユースショップの上場企業
株式会社 買取王国 代表取締役社長 長谷川 和夫 様
Q.2代目として社長就任された時の想いは?
26歳で会社を継いだが、その1年半後には父が他界した。その時に、「従業員の生活が、経営者である自分に掛かっている」と感じ、経営者としての責任を実感するようになった。当時は、赤字寸前の経営状況であり、私は危機感しかなかった。また、経営面では、会社への信用がなければ借入もできないため、早期に信用力を築く必要があった。
社長就任直後は、決算書を読んでも何が書いてあるのか分からない状況であった。そこで、会計士に教わりながら決算書を確認していった。すると、利益が出ていない店が数店舗あることが判明し、閉店させるか、利益を出せる体質に改善するかの二択を迫られた。しかしながら、ただ閉店するだけでは在庫や従業員が行き場を失ってしまうため、約6年かけ、収益の見込める新店をオープンし、それと並行して5店舗を閉店した。すると、ようやく安定した利益が出始めるようになった。
しかし、それでも危機感が残った。それは、時代の変化により、当社の主力商品であったレコードがCDやミュージックテープに代替されるようになっていたからだ。そこで、このビジネスモデルでは先がないと危惧し、1985年に本屋・ビデオレンタル・レコード店の複合店舗を郊外のロードサイドに新規出店することに決めた。この業態が、現在の「買取王国」の原型となっている。
Q.その後、どのように事業展開をしたのか?
複合店舗は予見通りヒットし、次々と店舗を増やすことができた。しかし、その後、「TSUTAYA」が同様の業態に後発参入し、競争関係となった。「TSUTAYA」には勝つ見込みがなかったため、当社がとった戦略は、本・ビデオ・CD・ゲームを中古品に特化して取り扱うというものだった。また、当時中古本のみ取り扱っていた「ブックオフ」に加盟し、流通を助けてもらったことがある。
次に大きな変化を促した要因は、インターネットの普及だ。インターネットが一般的になると、当社が取り扱っているようなパッケージメディアは、ネット上で直接売買されるようになり、店舗の存在価値が薄れていくと危惧した。
ネットの普及により、新たに始めたのが、総合リユース事業だ。主に、家電や家具を中心としたリユース店舗だったが、業績があまり良くなかった。その当時、衣服やホビー好きの従業員がおり、店舗で衣服やホビーの取り扱いを始めてみた。すると、徐々に売上が伸びてきたために、衣服やホビーに力を入れるようになっていった。
Q.事業面での強みは?
リユース店舗で言うと、「セカンドストリート」や「トレジャーファクトリー」などが同業に当たる。当社の強みは、ホビーとメンズ・ファッションだ。ガンやミニカーなどのホビーは、同業他社はあまり力を入れていない。また、メンズ・ファッションとレディース・ファッションの品揃えが、同業他社では1:2程度であるのに対し、当社では2:1とメンズ優位の比率になっている。
しかしながら、メンズ優位の売り場が近年ではネックになってきている。なぜなら、メンズ・ファッションは流行の変化が遅く、女性のように季節に応じて買い換えることが少ないためだ。メンズ・ファッションに強みを持つことが、他社と棲み分けできている要因であるものの、一方で女性客が弱い点は課題だ。
そこで立ち上げた「WHY NOT」という新ブランドは、女性客に向けた店舗になっており、レディース・ファッションを中心に、キッズ・ファッション、ブランド品、コスメなどを販売している。
Q.市場環境の変化をどう見ているか?
今現在、危機感を持っているのは、インターネット・サービスの台頭だ。「Amazon」に代表されるネット通販、「メルカリ」に代表される個人間取引(C2C)、「Kindle」に代表される電子書籍などが急成長している。それによって、例えば、書店の市場規模はピーク時に1.6兆円ほどあったが、現在は8000億円と半分になってしまった。Fin Techが発展すれば、銀行の店舗すら要らなくなるだろう。インターネットによるサービスが台頭し、店舗は次々と閉店していく。これは想像を上回る大きな変化だ。
Q.今後のビジョンは?
まずは、年商100億円・利益10億円の体制を確立したい。現在当社が手がけている業態(事業)は多岐に渡っているが、全ての事業が同じような仕組みで成長することができるとは考えていない。そこで、事業ごとに経営者を立て、自主的に事業が成長していくような「連邦経営」を実現したいと考えている。また、ITには代替できないような、新しい業態や仕組みを構築していきたい。
Q.海外事業やインターネット事業についての考えは?
越境ECには興味を持っており、同業他社も海外に進出している。しかし、日本の製品を海外で売っていくに当たり、海外で通用するものがまだまだ少ないと考えている。そのため、どのように日本の製品を海外で流通させていくか、リユース文化を根付かせるか、課題は山積みだ。ただ、海外においても、買取王国として独自のビジネスモデルを構築していきたいと考えている。
また、インターネット事業については、現在、宅配買取サービスを仕掛けているところだ。ただ、物流コストが莫大なので、効率化を進め、かつターゲットを絞り込み、ネット上で買取ニーズを喚起していく仕組みを確立していきたい。また、SNSを活用し、いかに顧客の評価を集めるかにも取り組みたい。
Q.今後の課題は?
最大の課題は、人材育成だ。目的を持った事業を創造しなければ、人は育たないと考えている。事業創造と人材育成を両立させていきたい。
会社概要
会社名 | 株式会社 買取王国 |
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事業内容 | ・買取王国、マイシュウサガール、Reco(リコ)、WHYNOT、工具買取王国の直営店舗展開・運営 ・古着、ホビー、雑貨、デジタル家電等の販売・買取 ・CD、DVD、ゲームの販売・買取 |
代表者名 | 長谷川 和夫 |
代表プロフィール | 昭和26年生まれ。上智大学法学部法律学科卒業後、東芝EMIを経て、共和商事入社。昭和63年 共和商事代表取締役社長に就任。平成11年 株式会社マルス設立(ソフト開発)、有限会社共和フーズ設立(飲食)。平成15年 株式会社買取王国を設立、本格的に店舗展開を始める。平成20年 共和商事の事業を買取王国に統合する。平成25年 東証JASDAQ上場。 |
沿革 | 1993年 ダンシングベア豊田店にてリサイクル事業の実験開始 2002年 総合リユースショップ買取王国一宮店オープン 2003年 株式会社買取王国設立 2013年 東証JASDAQ上場 2015年 EC事業への本格参入 |
本社所在地 | 〒455-0073 愛知県名古屋市港区川西通5丁目12番地 |
URL | http://www.okoku.jp/ |