リサイクル×グローバルで成長、プラスチックの専門商社

株式会社中部日本プラスチック 代表取締役 雪下 真希子 様

Q.社長就任の経緯は?

中部日本プラスチックは私の父が創業した会社ですが、私が入社したのは24歳の時のことでした。その当時、私は芸術家を目指してアメリカに留学していましたが、会社が貿易上の大きなトラブルに巻き込まれ大変な状況にあると連絡を受け、居ても立ってもいられず日本に帰国して家業を手伝うことにしたのがきっかけです。

私の目論見としては、トラブルが落ち着くまでは手伝いをして、もう一度海外に行くためのお金を貯めるつもりでした。もともと5人の従業員が在籍していましたが、トラブルのあとに残ったのは2人。プラスチックのことなんて何も知りませんでしたが、他に頼れる人もいなかったので、営業から経理、工場の仕事まで、できる事なら何でもやっていました。

無知なくせに一生懸命だったので、お客様にも沢山トンチンカンな質問をして呆れられていたと思います。しかし、問題を解決するため必死で奔走する私たちの姿を見て、同業のお客様が手を差し伸べてくださり、なんとかこの危機を乗り切ることができました。

それからも時代の波とともにいくつものピンチに見舞われましたが、その度に必死に解決策を探し、ようやく営業パーソンとして一人前になってきたかなという頃、父が突然社長を辞めると言い出し、他に適任者もいなかった為、代わりに私が会社の代表を務めることとなりました。その時、私は30歳になっていました。

こうして何の準備もなく、未経験の新人社長が誕生したわけです。今思えば無謀な事ですが、ただ私は、どんな問題があったとしても逃げずに常に向き合ってきた事で、中部日本プラスチックの代表取締役になったのだと思っています。

今も若い社員に言っています。無知だからこそできる事もあるのだと。知らないから人に訊ける。知らないから新しく学んでいくことができる。そうして「為せば成る」というマインドとやる気さえあれば、どんな事にもチャレンジしていけます。

Q.事業内容は?

事業内容は主に3つに分けられます。

一つは創業時から行っているプラスチックの「リサイクル」です。プラスチック製品を製造している企業から排出される「ロス品」と呼ばれる不良品を回収し、細かく砕いて、熱を加えて原材料に戻します。そうして作られた再生原料を企業にお返しする、あるいは外販するのがこの事業です。

二つ目は「原材料の製造・販売」です。様々な種類のプラスチック樹脂を使って、メーカーのニーズに合わせたカスタムメイドの原材料を製造・販売する事業です。

そして三つ目は「トレーディング」で、国内外からプラスチック原料を購入し、また国内外に販売する事業です。売上構成比では、このトレーディング事業が全体の80%を占めています。

国内の製造業において、海外に工場を移転する企業が増加し「ロス品」が減少を続けていることを背景に、リサイクル事業の改題には限界がありますが、トレーディング事業は全世界を対象に展開することができるため、そのような制約がありません。

Q.どのような想いで事業をやっているのか?

「コンパウンド、リサイクル、トレーディング、プラスチック樹脂のことなら、中部日本プラスチック」と言われるようになりたいと思っています。

そのためには、常にお客様の声に耳を傾け、お客様のニーズを理解し、それに応え続けることが必要だと思っています。

先にも述べましたが、創業時と比べ事業内容は大きく変化し、今では新しく始めた事業から得ている売上が全体の80%を占めています。しかしこれは明確なビジョンに基づくものではなく、ただただ目の前のお客様を大切にし、全身全霊で事業に取り組んでいった結果です。

お客様と真摯に向き合い、応えていくことで、お客様の新しいニーズが見えてくるようになり、自然と仕事も広がっていくものだと思います。

Q.なぜグローバルに事業展開しているのか?

あらゆる人・物・情報がグローバルに関わり合っている現代において、国外に目を向けないことの方が非合理的だと思います。

常に新しいことにチャレンジしたいと思っていても、サービス展開を日本国内だけに留めてしまえば事業機会は少なくなってしまいます。アジア、ヨーロッパ、アフリカ、全世界を取り込めば、ビジネスチャンスは無限に広がっていきます。

IT化が進み、携帯電話とパソコンさえあれば、世界のどこにいても私たちは仕事をすることができます。創業の地、浜松に本社を置いていますが、私は世界のどこに住んでいてもグローバルトレーディングをしていたと思います。会社をここまで育ててくれたこの地域に恩返ししたいと思うのと同時に、常に広い世界を見据えています。

Q.どのように海外のネットワークや販路を開拓してきたのか?

私たちはこれまでお客様の求めに応じていく事で海外でもネットワークを広げていくことができました。ビジネスにつながる機会があればテレアポを取ってお客様に会いに行く。そして当社に何ができるかを見つける。こうしていく事で少しずつ、しかし着実に販路が拡大していきました。

一例として、ベルギーの企業と取引を開始した際も、最初はコネも何もなく、まずはテレアポを取るところからのスタートでした。その企業はプラスチックのトレーディングでは世界一で、私はその会社がどうしてそんなに成功したのかとても興味があったので、まずは話を聞きに行ってみようと思ったのが事の始まりです。それからチョコレートの本場・ベルギーの方々に、日本の抹茶チョコレートをプレゼントしながら熱弁をふるったことで、世界的大企業とのご縁が生まれました。

Q.ここまで事業を拡大できた理由、戦略は?

ここまで成長することができた事の背景は、大きなビジョンを掲げ戦略に基いて行動してきたから、というより、目の前のお客様に喜んでいただけるようただただ一生懸命手を尽くしてきたからだと思います。

始めから着地点が見えていたわけではなく、頑張っていたら結果的に拡大していて、それが数字にも反映されていたと言った方が実感に近いかもしれません。

もちろん数字の管理をして、日々の行動の見直しなどは行っていますが、まず何よりも大切なのは、お客様に真摯に寄り添った最高のサービスと価格を提供できることだと信じています。

Q.組織面・人材面の強みは?

当社のスタッフは皆、仲良く、明るく、前向きで、その企業カルチャーに合う人材を採用しています。当社のスタッフに求められるのは、チャレンジ精神、サービスマインド、あきらめない心、健康なことだけ。そんなオープンで自由な社風に惹かれた若手社員が多いのも一つの特徴です。

採用で最も重要視しているのは、これまでにどんなアクションをして、どんなアウトプットをしてきたか、という事。社員一人一人に凸凹はありますが、明るくて、前向きで、楽しい組織になっていると思います。

Q.ビジョンについて。5年後、10年後、どのような姿を実現したいのか?

来年、浜松市内に5000坪の土地を買って、新工場を立ち上げます。それに伴い今までにはない新しいサービスを作りたいと思っています。例えばリサイクルの工程を見学したり体験したりすることもできる、地域に開かれた複合施設も考えています。

また10年後は、私は引退する時期になりますが、次の経営者を育て、しっかりバトンタッチをしたいと考えています。

私は父から事業を引継ぎ、会社を今のような姿に育ててきましたが、私にとっては次の社長が年商1000億円にチャレンジできる環境とそのための仕組みを作ることが役目だと思っています。

Q.リサイクルの今後の課題は?

欧州などと比較すると、日本ではまだリサイクルやエコの価値が十分に認められていないように感じます。なぜ海外でリサイクル材がこれほど売れているのか、日本では十分に理解されていません。リサイクル品の素晴らしさを情報発信して、人々の感性を変えていく必要があります。

みんな資源には限りがあると頭では分かっていても、不都合な真実からは目を背けています。例えば、ダボス会議で、「50年後は魚よりもプラスチックのごみの方が多くなっている」という話がされているのに、日本のメディアはそのようなことに興味がない。当社だけではできる事に限りがあるので、国や大手企業も一体となって、エコの重要性を啓蒙していくような取り組みが必要です。

Q.当社で働く魅力や価値は?

当社には、無謀だと思われるような事にも果敢にチャレンジできる環境があります。そこには新しいことに挑戦する楽しさ、やりたい事を形にできる機会があります。

チャレンジの結果、失敗してもいいと思います。失敗したら悔しいけれども、その悔しさの中で次の挑戦をしていけばいい。

年功序列、国籍、性別、学歴などの枠組みにはとらわれず、この会社でやりたいという気持ちを重視しています。

また社長である私が女性なので、子供を育てながら働くということが、口で言うほど簡単ではないことも分かっています。私がその大変さを分かっているからこそ、子供を育てながら働くことを全面的に支援しています。

当社では、女性であっても一生涯にわたって食べていける能力やスキルを身につけることができる。女性がやりがいを持って、続けられる環境があります。

会社概要

会社名株式会社中部日本プラスチック
事業内容・プラスチックリサイクル・コンサルティング
・プラスチック買取、製造、販売
・リサイクル委託加工、着色加工
・プラスチック原料の輸出入
代表者名雪下 真希子
沿革1971年 静岡県浜松市でプラスチック再生のための粉砕加工業開始
1994年 プラスチック原材料の輸出業務を本格的に開始
2003年 (株)中部日本プラスチックに組織変更
2003年 CHUBU HONG KONG(香港支社)開設
2008年 関東支店を開設
2011年 自社ブランド ラ・チュール 販売開始
2013年 シンガポール支社設立
2015年 西日本支店(岡山県)設立
本社所在地〒431-3113
静岡県浜松市東区大瀬町1844番地
URLhttp://www.cnp.co.jp/