郷土を愛し、郷土のために働く東北地方最大の中央卸売市場
八戸中央青果株式会社 代表取締役社長 横町 芳隆 様
Q.どのような理念・想いで、事業をやっているのか?
「情熱市場」を社員に対するチームポリシーとして掲げている。これは、お客様に見せるためのものではなく、自分たちの会社は何なのかということを社員に言い聞かせるためのメッセージ。感情を入れて仕事することを大切にしている。「1+1=2」ではなく「1+1=2!」。「1+1=2」は当たり前であって、そこに感動「!」がなければ仕事ではないと考えている。そのためには毎日理念を伝えていかなければ形にならない。
私たちの仕事は単に仕入れて売ることではなく、お客様である生産者の商品を高く売ること。そのため、生産者に対する信用が価値になる。一般的には安く仕入れようとするが、私たちは高く仕入れ、高く売れるようにする。生産者の想い、苦労を知っているからこそ、適正な価格で仕入れたいと思う。そのため、無下に安く仕入れることはしない。
Q.創業の経緯は?株主構成は?
当社は40名の株主で構成されており、半数は青果関係の方で、残り半分は多岐にわたる。一般的な中央市場は、問屋が合併して成立しているところが多い。当社の沿革は、昭和7年、農産物の流通が不安定だった時代、当時は、農家からも「問屋が安く仕入れて高く売っている」という不満があり、それならば農家が集まって、市場を作ろうということで立ち上がった。農家、農協、市の人など売り手も買い手も集まって形成されたのが当社だ。株主に生産者も問屋も入っていてバランスが取れている点が、問屋中心で成立した他の中央市場との違いであり、誇りにも感じている。
Q.株主が多いと、株主のコンセンサスに苦労されることはないか?
株主同士で理念を共有できているため、苦労はしない。「人のためになる、社会のためになる、ひいては将来のためになる」ことをまっすぐに見据え経営している。従って、決して短期的な利益追及でなく、長期的な視点に立ち、社会のため、将来のためになることが出来ている。
Q.市場環境はどのように変化しているか?
当社のライバルは同業他社ではなく、急速に進行する少子高齢化だ。加えて、生産者の減少と担い手不足、ドライバー不足、天候不順・異常気象による生産者の不安定さなど、かつてない脅威に見舞われている。
現在、TPPなど外部からの調達による食料の安定化を図ろうとしているが、それは大きな間違いであり、生産地を育てる仕組みづくりことこそ、本質的な問題解決になると考えている。スーパーマーケットに求められている「適時適量・安定価格・安定供給」を実現するために、我々が貯蔵施設などの整備を進め弾力的な入出荷体制を構築する必要がある。
また、当社の理念にもあるが「広く大きな視野に立ち、自然と人とが共生できる循環型社会」を目指している。そのためには、ごみを分別してリサイクルすることや、ガソリンを必要以上に使わず、なるべくCO2消費量を減らすことが重要だ。宅配サービスは環境への負荷が大きい。10人の生産者に10人の購入者がいた場合、卸売市場があれば導線は20で済むが、それぞれが直で取引し始めると導線が100になってしまう。個人の都合を優先しすぎるあまり、多くの無駄が生じ、その結果多くのガソリンが使われ、地球温暖化につながっている。だからこそ、卸売市場の本質的な価値が再認識されるべき時代だと考えている。
Q.グループ全体の事業規模は?
八戸中央青果のほか、(有)まるはちビジネスサービス、(株)ベジフルエイト、八戸農産加工(株)、という3社のグループ会社がある。加えて、2017年に北日本中央青果と合併したことにより、グループ全体の売上は255億円となった。卸売手数料は平均して6.3%のため、営業収益は16億円程度だ。
Q.組織面・人材面の強みは?
人材の強みとして、素直な人が多い。素直な人は伸びると実感している。組織の雰囲気は、元気はつらつで、明るい。当社に来ていただければ、社員の活気を感じるはずだ。
お客様は、野菜や果物に、「新鮮さ・おいしさ・安さ・安全性」を求めている。これは人間でも同じだと思う。「新鮮さ」というのは、人間に置き換えると、元気や活発さ。「おいしさ」は、人間味・人情味として温かさ・優しさに繋がるものだ。「安さ」とは、「お安い御用です!」と自分を安くし、話しやすい・近寄りやすい存在であることだ。このように、青果物を見る目線と人を見る目線が当社の場合同じであるため、それが自然と身についている社員が多い。
Q.ビジョンについて。いつまでにどのような姿を実現したいのか?
株式公開したいという想いはある。地方では株式公開している企業が少ないため、お付き合いさせて頂いている地域の業者さんや農家の誇りになるのではないかと考えている。そのために、3年後に300億、10年後に500億を売上の目標にしている。
嬉しいことに、色々な話が私のところに集まってくる。例えば、中小企業の経営者も後継者不足で、「横町社長に経営を任せたい。お客様も従業員も任せたい」という話があらゆる場面で増えている。このように、色々な案件がてんこ盛りで多忙しだが、一つだけ言えるのは、農産から離れた事業はやるべきではないと考えている。バスケは両足をずらしたらファールになるので、片足軸足はぶらしてはいけない。事業も同じで、軸足は農産からぶらしてはいけないと考えている。
Q.更なる発展・成長に向けて、新しい取り組み・挑戦は考えているか?
「古きをたずねて新しきを知る」ように、新しいものは常に既存事業の中にある。それを改革していくことに新しさがあると考えている。事業を見つめ直すことが更なる成長には不可欠。よく見ると穴が見え、進むべき道が見えてくる。そのためには現場に近づくことであり、新しいヒントは現場にある。新しい取り組みというのは、何も全く目新しいことをやることではないと考えている。
Q.卸売市場の廃業が増えている。なぜか?
チームプレーができていないではないか。卸売市場には問屋がおり、問屋に元気がなくなったら市場は終わり。衰退の原因はそこだと思う。問屋さんを大事にしなければならず、彼らの経営がうまくいくよう応援していなければならない。周りが繁盛すれば、自然と私たちも繁盛するはずだが、廃業した市場にはその視点がなかったのではないか。大手のスーパーと付き合って倒産した問屋がたくさんある。そんな評判がついたら終わり。私たちは、「八戸中央青果のお陰で良くなった」とお客様から言って頂けるように、お客様と一緒になって繁栄していきたい。
Q.北日本青果との経営統合、メリットは?
「1+1=2!」だ。私たちは「!(感動)」を届けたい。メディアでも、「八戸中央青果と北日本青果が合併し、東北一の卸売会社が誕生した」と報道される。すると、知名度が上がり、信用、信頼も上がっていく。その結果、今まで取引なかったところと取引ができるようになり、結果、仕入れが増え、新鮮な商品を安定供給できるようになる。
これまでは、経営資源が分散されていた。それが一つになることによって、経営資源に余裕ができ、今までと違うことに使うことができる。新しい事業、新しいサービスに資源を振り分けることができる。周りのみなさんに提供できるサービスの質が上がる。これが北日本青果との経営統合のメリットだ。
Q.入社を検討されている方に一言。
「まず、覗いてみなさい」と言いたい。人間には第六感がある。この感覚が一番大切。動物が0.何秒で敵か味方か感じ取れるように、同様の能力が人間にも備わっている。スマホばかり見ていないで、まずは覗いてみて。第六感が働かなければミスマッチが生じる。第六感は正しい。インターネットの情報だけでは、第六感は働かない。その会社に合うか合わないかは仕事の内容ではない。会社のもっている匂い・雰囲気は人の第六感を騙せない。
会社概要
会社名 | 八戸中央青果株式会社 |
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事業内容 | 青果物・加工品等の卸売業 |
代表者名 | 横町 芳隆 |
代表プロフィール | 昭和33年生まれ。大東文化大学経済学部卒業後、昭和56年に八戸中央青果へ入社。執行役員、代表専務取締役を経て、平成19年に代表取締役社長に就任。 |
沿革 | 昭和7年 株式会社八戸農産市場を設立 昭和16年 八戸青果株式会社に社名変更 平成26年 市場センター施設完成・稼働 平成29年 北日本青果株式会社と合併 |
本社所在地 | 〒039-1161 青森県八戸市大字河原木字神才7番地4 |
URL | http://www.hachinohe-seika.co.jp/ |