「鯖のある生活」を創造する急成長中の鯖ベンチャー
株式会社鯖や 代表取締役 右田 孝宜 様
Q.当社を創業した経緯は?
「鯖へのあくなき挑戦」を掲げ、妻と二人で2007年に創業した。当社を創業する前は、小さな居酒屋を妻と経営していたが、鯖寿司はお客様からの評価が高く、妻からも「あなたの料理の中で唯一美味しい」と言われたことで、「鯖一本で勝負しよう」と決意を固めることができた。
Q.現在の事業内容、事業展開の状況は?
当社では現在、鯖寿司直販店を3店舗、とろさば料理専門店「SABAR」を13店舗展開している。サバにちなみ、店舗数は国内に83店舗展開を目指しており、2016年にはシンガポールにも出店した。また近年は、大手企業や行政とコラボし、鯖文化の創造に向け市場開拓を進めている。
Q.どのような理念・想いで事業をやっているのか?
当社では、鯖のマーケットを開拓し、「鯖のある生活を提供すること」をミッションに掲げている。現在、鯖は魚の人気ランキングでは2位である一方、消費量では8位である。それは、鯖を食べる環境が少ないことが原因だ。「鯖の専門商社」として、鯖のブランド化をプロデュースや、鯖を食べる環境を創造していくことが当社の役割だ。
Q.鯖ブランドのプロデュースとは?
小浜市と連携し「よっぱらいサバ」、JR西日本と連携し「お嬢サバ」というブランドを手掛けている。「よっぱらいサバ」とは、酒粕をエサに混ぜ、それを食べて育った鯖のことだ。「お嬢サバ」とは、地下海水を使って育てられ、寄生虫が付きにくく、生でも食べられる鯖のことだ。これらのブランド鯖は当社を通して流通する。このような企業や自治体と組んで販路を広げ、当社はブランディングに徹することで、更なるマーケット拡大を進めることができるのだ。
Q.小浜市とは、具体的にどのようなコラボを行っているのか?
小浜市と連携協定を結び、「よっぱらいサバ」の養殖を行っている。「よっぱらいサバ」を堪能できる小浜市アンテナショップを2017年内に4店舗オープンする予定だ。既に1号店は大阪にオープンしており、大変好評である。また、2017年9月にオープンした「鯖街道体験酒場」では、鯖寿司を作る体験からコース料理を召し上がっていただけるようになっている。
小浜市と連携した背景には、これまで「鯖を食す」ことにフォーカスを当ててきたが、今後は「鯖を文化として広めていく」というミッションを掲げて、事業展開していくためである。創業してからの10年間は、とにかく多くの人に鯖を食して頂くために遮二無二動き回ってきたが、今後10年は、「鯖文化」の情報発信を強化し、自らの手で世界にマーケットを創っていきたい。
Q.鯖文化を広めるために、どのようなPR・情報発信をしているか?
具体的な取り組みとして、日本記念日協会と連携し、3月8日を「サバの日」と制定した。「サバの日」には、「JR大阪駅」でサバのイベントを開催している。今後は、節分の日に恵方巻きを食べるように、サバの日には鯖を多くの人に食してもらいたい。また、2017年10月には小浜市で「サバフェス」を開催し、日本水産と共同開発したサバ缶を38万缶、380円で販売する。そのほか、大阪ガスが運営する「大阪ガスクッキングスクール」と連携し、サバ料理の体験教室を開く計画も立てている。このように、「鯖のある生活」を身近にするマーケットの創造、文化の創造に注力しているところだ。
Q.アライアンス戦略についての考えは?
当社のように企業規模が小さい「蟻」のような企業が、社会的に大きな価値を創造するためには、「象」のように社会的影響力の大きなプレーヤーと組まなくてはならない。当社が「西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)」や「株式会社神明」のような大手企業、「小浜市」のような行政とコラボするのは、そのような考えによるものだ。このような影響力の大きな相手とコラボできているのは、当社が鯖に特化し、商品を磨き、積極的に情報発信してきたからからだろう。これが当社のブランディング戦略に大きく寄与している。
Q.「クラウド漁業」では、何を行っていくのか?
当社では、2017年7月に「クラウド漁業」という漁業ベンチャーを新たに立ち上げた。「クラウド漁業」で進める事業は主に3つある。
一つは、養殖業育成モデルの研究開発。養殖には匠の業が必要となる。それは、魚の食欲に合わせてエサの量を変えることであり、毎日の業務となると労働力がかさむ。そこで、餌付け業務をドローンで自動化し、かつ養殖初心者であっても養殖ができるような「養殖の最適解作り」を模索している。この育成モデルを全国に普及させ、養殖関係者の待遇改善や新規養殖関係者の創造を実現していきたい。
二つ目は、未利用魚の再生事業の研究開発。未利用魚とは、市場に出回らず捨てられてしまう魚のことであり、我々が食べている魚の9倍以上が未利用魚として廃棄されているのだ。当社は、未利用魚に着目し、未利用魚を使って養殖のエサを生産できないか研究していく。
三つ目は、混合養殖スキームの構築。多種多様な魚を同じいけすで養殖するモデルは日本初の試みだ。もし混合養殖が実現すれば、養殖所のある地域に生産加工所を設け、加工済みの魚を飲食店に供給することが可能となり、雇用の創造にも貢献できる。また、予め加工して運搬することにより、運搬コストを50%削減することもできる。
これらが軌道にのれば、離島の行政に対して、離島の魚を通して地方活性化に貢献できる提案を行えるようになる。また、離島酒場および飲食店のプロデュースなども進めることができる。このように漁業業界にとって価値のあることを、漁業ベンチャーとして手がけ、若者が漁業に興味を持ち、結果的に漁業従事者の増加や後継者不足の解消に貢献していきたい。
会社概要
会社名 | 株式会社鯖や |
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事業内容 | 鯖寿司・鯖製品の製造、卸、販売 |
代表者名 | 右田 孝宜 |
代表プロフィール | 1974年、大阪府生まれ大阪育ち。大阪市立淀商業高校を卒業後、魚屋に勤める。23歳で単身オーストラリアに料理の修行し、現地で入社した寿司チェーン店では業績を伸ばし、当時2店舗だったお店を2年間で13店舗まで拡大させた。その後日本に帰国し、2007年に「株式会社鯖や」を設立。2014年には『とろさば料理専門店SABAR』をオープンさせ、現在14店舗を展開する。 |
沿革 | 2007年 「株式会社 鯖や」設立 2011年 お寿司体験学習実行委員会を立ち上げ、お寿司体験学習を全国の小学生を対象に開始 2017年 小浜市と連携協定を締結 |
本社所在地 | 〒561-0834 大阪府豊中市庄内栄町4-21-40 |
URL | http://www.torosaba.com/ |