求職者のカルチャーフィットをAIで可視化するスタートアップ
株式会社ミライセルフ 代表取締役社長 表 孝憲 様
Q.起業までの経緯は?
新卒で入社したモルガン・スタンレー証券で採用面接に携わっていた。採用しても社風に合わないことで長続きせずに辛い思いをする人をみるたびに採用面接のあり方に疑問を抱き始めた。モルガン・スタンレー証券を退職し、カリフォルニア大学バークレー校ハースビジネススクールに留学した際に、アメリカで普及している性格診断「MBTIテスト」をヒントに、適性検査の結果を分析し、似た価値観をもつ求職者と企業をつなぐ転職マッチングサービス「mitsucari」を立ち上げた。当時Googleのエンジニアだった井上(現・CTO)と共同創業したのが当社の始まりだ。
Q.「mitsucari」とは、どのようなサービスか?
「mitsucari」は、適性検査と人工知能による分析で社風・風土にフォーカスを当て、カルチャーフィット度合いを可視化するサービスだ。当社が独自に開発した適性検査を、まず採用企業の社員に解いてもらい、組織内の傾向を計測した上で、求職者にも受講してもらう。それによって、人工知能を活用し、共通点の多い求職者と採用企業を見つけ出し、マッチング度合いを計測し面接や配属に生かすというサービスだ。
Q.顧客のどのようなニーズに応えるサービスなのか?
「mitsucari」は、主に、入社面接や配属先決定時に利用されている。「mitsucari」を活用することで、企業は、会社の社風・風土に合う人材の採用や配置を行うことができる。その結果、離職率の低下や生産性の向上に貢献している。
Q.どのような質問に答えると、どのようなことが分かるのか?
主な質問内容としては、「楽観的か、悲観的か」、「興味のない仕事でも給料が高ければいいか、給料が低くても自分のやりたい仕事をしたいか」、「プレイヤーとして働きたいか、マネージャーとして働きたいか」、「チームの成長のために働きたいか、チームの成長のために働きたいか」、「一人で集中してする仕事の方が好きか、人とコミュニケーションを取りながらする仕事の方が好きか」などが挙げられる。
それらの質問に回答することで、「外向型or自問型」、「論理重視or想い重視」「共感型or主感型」「協調型or競争型」「冷静型or情熱型」「楽観型or慎重型」「自己評価or他己評価」「理念重視orビジネス重視」「過程重視or結果重視」「専門追求型or組織貢献型」「着実志向or挑戦志向」「仕事重視orプライベート」「給与重視or仕事内容重視」「私仕混同or私仕分離」という14の軸でパーソナリティや仕事観が明確になり、それぞれ7段階評価で可視化される。
Q.確かに、カルチャーフィットは大事だと思うが、それをAIで評価するのは簡単ではないように思うが?
求職者と企業のカルチャーフィットは、むしろAIにしかできない領域だと考えている。なぜなら、面接担当者の直感に頼ると再現性がないが、AIにはアルゴリズムに基づいた再現性があるからだ。AIの精度を高めるためには、データ量は必要だが、一定のデータを蓄積できれば、応募者が回答するたびにカルチャーフィット度合いを評価することが可能になる。
Q.類似する価値観を持った人たちばかりが集まる組織よりも、多様な価値観を持った人たちが集まる組織の方が強いと考えているが、どうか?
これは組織によると考えている。類似した人材で全社員の6割を占めるのが良いのか、8割を占めるのが良いのかは企業によって異なる。実際、多様な価値観を持つ人材が集まる組織の方が強いという客観的データは存在していない。また、当社の顧客を対象にした調査結果では、カルチャーフィット度合いが65〜70%と平均値よりも高いことが分かっている。類似する価値観を持たない社員ばかりが集まった組織では、コミュニケーションロスが発生してしまう。
Q.導入企業に対し推奨している使い方は?
「mitsucari」の特徴は、採用面接を属人化せず、精度を一定にすることにある。そのため、72問を在籍社員と応募者に回答していただくことで、双方の価値観の相違が明らかになる。価値観の相違が明らかになれば、採用面接で特に擦り合わせが必要なポイントが明らかになるため、構造化面接も導入しやすくなる。
Q.料金体系は?
適性検査の受講料を頂いている。応募者1名に対し800円の従量課金、社内では一定期間まで無料としている。現在、他のマネタイズも考え始めており、採用報酬や配属面談のサポートなどのサービスも模索している。
Q.どのように事業の立ち上げを行ったのか?
私の経験から、社風に合う企業で働きたいと思う転職者が多いにも関わらず、社風から企業を探せる転職サービスがないことに違和感を覚えた。そこで、社風を可視化する適性検査の導入から始めることにした。企業の採用担当者とお付き合いする中で、企業が抱える最大のニーズは、自社で活躍できる人材を見抜くことでなく、自社に合わない人材を見抜くことにあることが分かった。そこで、適性検査でカルチャーフィット度合いの当たりをつけ、面接で見抜くような構造化面接の普及を実現したいという想いを持って、2016年2月からサービスを開始した。
Q.会社として、どんなステージなのか?
まず、資金調達面では、シードとシリーズA合わせて1.5億円を調達している。導入企業数は、無料版の導入企業数が600社を超えており、課金企業数も順調に推移している。プロダクトの開発については、適性検査機能は実装済みであり、次のバージョンアップに向けて動いている。
マーケティング・営業面については、営業3名+マーケター1名で動いている。営業は、インバウンドでお問い合わせ頂いたお客様に対して、提案営業を行うという方法が中心だ。マーケティングは、ランディングページのブラッシュアップ、人事担当者向けブログでの情報発信、人事系メディアでの情報発信、人事系イベントへの登壇、代理店・パートナー企業とのアライアンス拡大などを進めている。
Q.海外で類似するサービスはないのか?
私の知る限り、カルチャーフィットを重視した転職マッチングサービスはまだまだシード段階のものが多い。ただし、無料で受けられる検査などサービスは多数存在する。日本で成果を上げることができれば、英語版などの展開も考えている。カルチャーフィットと組織貢献に関する研究は、全世界で実施されているため、日本企業で評価されれば、海外でも十分通用すると思う。
Q.組織・人材面での特徴は?
技術力には強みがある。GoogleやIBM出身の優秀なエンジニアが在籍しており、開発については社内で取り決めた納期よりも前倒しで完成することもある。社長以外はみな理系出身であり、人材会社としては異色なことだ。
感情的よりも論理的な社員が多い。また、自分の意見を積極的に発信する人が多く、仕事熱心で自分の仕事に誇りを持っている。また、各々が専門的な知識やスキルを持っている。
Q.今後のビジョン、戦略は?
当社では、「社会全体の適材適所」をミッションに掲げており、どんな人にも合う仕事があるということを追求していきたい。当面のビジョンとしては、3年以内のIPOを目指している。世界市場で戦うことを重視しており、そのためには資金が必要であるため、そのためにIPOを実現したい。事業戦略としては、適性検査をブラッシュアップし、導入企業を増やすことで、データを蓄積し次の展開を考えたい。
会社概要
会社名 | 株式会社ミライセルフ |
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事業内容 | 人工知能適性検査ツール「mitsucari」の開発・提供 |
代表者名 | 表 孝憲 |
代表プロフィール | 京都大学・法学部卒業。新卒でモルガン・スタンレー証券株式会社の債券部に入社。営業として勤務する傍ら入社後半年から週末は面接官として従事し採用リーダーとして毎年1,000人以上の学生と面接。2015年6月に退職しUCバークレーハースビジネススクールに留学。2015年5月に人と組織のカルチャーを可視化して自分や自社に合った人や組織を見つけるサービス「mitsucari」をスタートと同時に、代表取締役社長に就任。 |
沿革 | 2015年 株式会社ミライセルフ設立。「mitsucari」のサービスローンチ 2016年 「mitsucari」本格的にサービス提供開始 |
本社所在地 | 〒530-0032 大阪府大阪市北区樋之口町1-20-1914 |
URL | https://mitsucari.com/ |