IoT・AI・セキュリティも展開、革新を続ける神戸最大のIT企業

株式会社 神戸デジタル・ラボ 代表取締役 永吉 一郎 様

Q.起業からこれまでの経緯は?

京セラのエンジニアとしてカメラの開発に携わっていたが、神戸で中小広告会社を経営していた父が突然重病で倒れたため、京セラを退職し、1991年に経営を引き継いだ。当時はまだパソコンが一般普及していなかったとはいえ、広告制作を全て手作業で行っていたことに衝撃を受け、MacintoshのPCを導入した。在阪大手広告会社も広告制作にPCを使っていなかった時代なので、当時としてはかなり先進的だったと思う。

当社の転機は、神戸に新設される大型タワーマンションのコンペだった。そのコンペには、関西の有名広告代理店など13社が参加していたが、幸いにも当社が勝つことができ、その時にビジネスとして成功できる感覚を覚えた。そこで、イベント会社を新たに作り、イベントや動画制作も開始することになった。

しかしながら、1995年に阪神・淡路大震災の被害を受け、ビルごと事務所を失うことになった。それでも、PC化を進めていたために残されたデータを基に、震災から2週間後には業務を再開することができた。震災直後に、神戸市から被災者住宅の立て看板制作を依頼されるなど、少しずつ仕事が増え、会社を成長させることができた。この時の経験が新しい会社の構想につながっていった。

Q.現在の事業内容は?

WEBビジネスを中心としたサイト構築・運用の開発事業、IoTやAIなど先端技術開発やセキュリティソリューションを手がけるサービス事業の2つが事業の柱だ。従業員構成は、開発事業で100名、サービス事業で50〜60名、管理部門で15名おり、神戸市の独立系IT企業としては最大規模だ。

開発事業については、バックエンドシステムの開発に強みを持っている。創業当時、多くの企業がホームページ制作に参入したが、ホームページ制作の裏側であるバックエンドシステムを手がけているプレーヤーは少なかった。また、動画の活用や顧客管理に取り組む企業が増え、それに伴い様々な開発需要が高まってきたが、それに応えることができたのは、当社が成長する一因となった。

Q.セキュリティ事業は、どのような経緯で始めたのか?

「Yahoo!BB」が50万人分の顧客情報を漏洩し、損害賠償に発展するほどの大事件となった。この事件を知った時に、もしうちで情報漏洩が起これば賠償金だけで会社が吹っ飛ぶほどのインパクトがあると思って、同じことが起こらないように自社の開発分にはセキュリティホールの出荷検査を行うことにした。すると、大手アパレル企業から非常に多くのブランドサイトのセキュリティレベルをチェックして欲しいという依頼が舞い込み、請け負うことになった。これが、セキュリティ事業部誕生のきっかけとなった。

時を同じくし、神戸市が世界的にもセキュリティ研究で有名なカーネギーメロン大学を誘致した。結果、幸いなことに、神戸に来たセキュリティ専門家が数名当社に入社してくれた。それによって、当社のセキュリティ技術力の裏付けとなり、技術力の高さをアピールすることにつながった。現在、セキュリティ事業部は20名のエンジニアが在籍しているが、これは西日本で最大規模である。

Q.どのような理念・想いで事業をやっているのか?

当社では企業理念を「KDL WAY」にまとめている。基本理念は、「お客様目線のプロ集団であり続ける」ことであり、基本理念を体現するために6つの行動目標に落とし込んでいる。それは、「〈迅速〉考えて立ち止まるよりも、失敗を恐れず行動しよう」、「〈信頼〉豊かな人間性とコミュニケーション力でお互いに協力し助け合おう」、「〈感動〉情熱をもって活動し、お客様、従業員に感動を与えよう」、「〈挑戦〉出来ない言い訳を百並べるより、出来る方法をひとつ考えよう」、「〈品質〉品質はお客様との最も重要な約束事と考えよう」、「〈継承〉事業の継続と発展の為に、後進の育成に取り組もう」というものである。私の考えでは、信用と人脈があればビジネス(ひいては会社)は存続できると考えているが、これ安定継続させることが最も難しいことだとも痛感している。

Q.事業面の強みは?

第一に、新しいサービスを次々と立ち上げてきたことが強みとなっている。実際、セキュリティサービスを立ち上げた際も、周りからは「儲かるのか?」と言われることが多かった。しかしながら、お客様からの要望に応じ、迅速に行動へ移すことができたからこそ、現在のポジションを築くことができたと自負している。

第二に、研究開発部門を有していること、また、新規事業の一歩手前のステップとしてクラブ活動を認めていることだ。例えば、VRを楽しむクラブ活動を社内で始めたところ、兵庫県から県政150周年記念をPRするために、当時の兵庫県庁内をVRで見学できるソフト開発案件を受注することに繋がった。このように、社員の自主活動から始めたことがビジネスに繋がっていくカルチャーは当社の特長と言えるかも知れない。

Q.IT企業として、どのようなポジションを目指しているか?

今後のIT業界では、プログラミングのようなIT技術力は当たり前になり、そうした技術力を基に、あらゆる業界でネットワークを利用したサービスが立ち上がっていくことになるだろう。ただ、当社が自社サービスを立ち上げるのではなく、あくまでもそのようなネットサービスを立ち上げたい方々の駆け込み寺のような存在になりたい。当社は、ITを極めているからこそ顧客に提案できる知恵をたくさん持っている。IT企業でありながら各産業分野のことも熟知している「アクセンチュア」のようなポジションを築いていきたい。

また、今後は各産業界からAIによる全体最適の解を求められるようになってくるため、今のうちからAIの知見を蓄積していく必要がある。その一環として、当社はAI技術に強みを持つ企業と連携し様々な開発を行っている。今後どのような展開が待っているか非常に楽しみにしている。IT業界は今後厳しくなる側面もある一方、これまでに無かった楽しい業界になっていくだろう。

Q.組織面・人材面の強みは?

一つは、採用時に厳選していること。たとえば入社後、仕事でしかプログラミングを触ったことがないというような人間はどんどん厳しくなっていく。つまり意欲も経験もない段階から社内で育てるのは限界がある。そのため、新卒採用においては、基本的にインターン採用を重視しており、仕事ができる意欲を持っているか、クリエイティブな発想ができそうか、チームプレイを重んずるか、個人の技術を磨きたいかなどのポイントを見定めている。

二つ目は、マネジメント層に良い人材が増えてきたこと。IT業界の中でも離職率が低く、ここ数年でマネジメント層の人材が育ってきたと感じる。また、人材が多様であることも特徴だ。外国人は全社員の約10%を占め、女性も25%を占めている。

三つ目、オフィスを1フロアに集約したことで、コミュニケーションが活性化したこと。以前は、3フロアに分かれていたが、2015年に1フロアのオフィスに移転したことで、社員同士の対話や交流が増え、クリエイティブ性は増したと感じている。

Q.神戸にいることは、何か強みになっているか?

一つは、苛烈な人材獲得競争に巻き込まれないこと。事実、東京に行きたいので辞めたいという社員は今までいなかった。その要因は、神戸が住みやすい街であるからだろう。私も神戸に愛着があるため、社名を「神戸デジタル・ラボ」としている。また、神戸の場合、「産・学・官・民」すべての顔が見えやすいことも利点だ。

二つ目は、全国のお客様に対し、神戸から遠隔でお仕事できていることだ。パソコンがあれば遠隔で仕事できる世の中だからこそ、東京にオフィスを構えるのはコスト負担が大きく損だと感じる。現在のお取引先企業は、神戸に拠点を構える企業が全体の3分の1、残りは全国津々浦々だが、必要に応じて都度出張をすれば今の所全く問題がない。

三つ目は、神戸に同等規模のライバルが存在しないことだ。そのため、独自性を打ち出しやすく、IT企業として注目を集めやすい。

Q.今後のビジョンは?

企業規模としては、300名体制・年商100億円を目指していきたい。受託開発のような「単価×社員数」で売上が決まる事業ではなく、サービス事業を伸ばすことで、その目標を達成したい。サービス事業は、当面セキュリティサービスが柱となるが、今後はIoT領域も大きな可能性を秘めている。また、IoT事業を手掛けている会社はたくさん存在するが、その多くはお客様の仕様通りのものを作るばかりで、お客様の想定を上回る知恵を提供できている会社は少ないように感じる。当社では、IoT事業の一つとして、「会議室が使われているか、空いているか」「扉が開いているかしまっているか」など、「スイッチのON・OFF」を一元管理できるクラウドサービスを近々リリースする。

Q.今後の課題は?

受託開発を事業の柱にしている限りは、人月仕事から抜け出すことはできない。今後はITの技術力ではなく、知恵をコア・コンピタンスにしていくべきだと考えている。各産業界が当社と組みたいと思っていただけるよう、社員一人ひとりが自ら知恵を出せるように成長していくことが必要だ。

Q.求める人物像は?当社で働く魅力は?

当社に合う人材がどのような方かを明文化することが難しかったため、インターンシップ採用に切り替えた。従って、実際に仕事を経験してもらう中で、「現場の社員がその方と仕事をしたいか」、「求職者もこの会社が好きか、経営者や先輩が好きになれそうか、成長できる風土と感じるか」を採用基準としている。当社では、必ずしも高学歴の人が欲しいわけではなく、人間偏差値の高い人材を求めている。また、新しいことに好奇心を持って飛びつくような人材も当社にマッチするだろう。

当社で働く魅力としては、難易度の高い課題を与えられ取り組める環境があることだ。最先端のIT技術を掛け合わせて新しい価値を創造できる当社の環境は、感度の高い方には魅力的に感じてもらえることが多いと思う。

会社概要

会社名株式会社 神戸デジタル・ラボ
事業内容・ITコンサルティングサービス、システム開発、Webサイトプロデュース
・情報セキュリティサービス、システム運用・保守サービス、アウトソーシングサービス
代表者名永吉 一郎
代表プロフィール1962年生まれ。広島大学卒業後、京セラ(株)光学機器事業部にてカメラ設計・海外工場における生産立上・商品企画を担当。1991年、神戸で広告会社を経営する父親が急病で倒れたため、急遽帰神し、代表取締役に就任。1995年阪神大震災を経験し、震災時のITの役割に気づき、同年KDLを創業。現在に至る。
沿革1995年 神戸初のデジタルコンテンツ&ネットワークシステム専門会社として設立
2001年 6年連続増収増益。事業部制に移行し提案力の強化と開発の効率化を図る
2007年 CUSC(ベトナム・カントー大学)内に開発センター設立
2008年 Webセキュリティ診断サービス「Proactive Defense」の提供開始
2013年 シンガポール子会社「KDL (SG) PTE. LTD.」を設立
2014年 京都大学と共同開発した「関係性エンジン」の提供開始
2014年 商品購入までを最短で導く「リッチサジェスト」の提供開始
2014年 EC構築ツール。運用支援サービス「EC Suites」の提供開始
2014年 ウェアラブルアプリケーション「Wear Assist」の開発開始
2015年 本社事務所を現在の新クレセントビルに移転
2015年 子会社「バニヤン・パートナーズ株式会社」を設立
2017年 AWS導入運用支援サービス「クラウドコレクションfor Amazon Web Services」 を提供開始
2017年 クラスタリングオートメーションツール「nosy」提供開始
本社所在地〒650-0034
兵庫県神戸市中央区京町72番地 新クレセントビル
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