細胞から宇宙まで、NASAも注目する流体機器専門メーカー

高砂電気工業株式会社 代表取締役社長 浅井 直也 様

Q.社長就任までの経緯は?

当社は、父が創業した会社だが、私は大学卒業後、テレビ局で10年近く仕事をしており辞めるつもりもなかった。32歳の頃に父から「会社の存続のために、入社して会社を継いで欲しい」と言われるようになった。それがきっかけで当社に入社した。

Q.事業内容は?

当社の主力製品はバルブである。バルブとは、液体や気体の流れを止めたり、流したりするための装置である。バルブは、水道の蛇口や自動車など多岐にわたり活用されているが、当社の場合は、分析装置のバルブに特化している。

その中でも、血液分析装置用のバルブで国内トップシェアを誇り、推定で30億円程度の国内市場のうち約15億円を当社が占めている。血液分析装置は、健康診断等でも活用されており、手動であればピペットで血液や試薬を分注する工程を、当社のバルブを使用すれば自動で装置内に分注することが可能になる。

当社のバルブは、マイクロリットルという微量の液体を正確に装置内で分注し、かつ高速で同じ動作を繰り返し、化学薬品による腐食にも強いことが特徴だ。バルブ事業が事業全体の約90%を占めている。バルブの顧客先は装置メーカーとなり、血液分析装置で言えばグローバルメーカートップ3社のうち、2社が当社のお客様だ。

Q.なぜ国内トップシェアを取れたのか?強みは?

50年以上の社歴で築いてきた3つのキーワードが要点となっている。第一に、「カスタマイゼーション」。これは、お客様のご要望にお応えするということであり、創業時から大切にしているテーマだ。例えば、1960年代に堀場製作所からのご要望にお応えしたことで、自動車の排気ガス分析装置に特化したバルブを開発、また、1980年代にはオリンパスからのご要望にお応えしたことで、血液分析装置に特化したバルブを開発することができた。このような「カスタマイゼーション」が当社のニッチ・トップを築き上げた。

第二に、「ミニチュアライゼーション」。当社はバルブ会社としてパイオニア的な存在であり、圧倒的な先行者優位があったものの、依然として大企業といかに差別化を図るかという課題は残っていた。そのために、バルブそのものや、それを搭載する基板を小型化し、マイクロリットルという微量の液体を制御する「ミニチュアライゼーション」をおよそ15年前から進めてきた。

第三に、「インテグレーション」。これは、バルブ、ポンプなど複数のコンポーネンツを組み合わせ、一連の流体制御機能をパッケージ(モジュール)として提供するということ。お客様はシステムのコンセプトと、ご希望の機能さえ示していただければ、設計・部品選定・試作品製作までを一連で対応することができる。

Q.下請け会社なのか?

当社は、設計から製造までを一貫して請け負っているため、下請けではない。お客様からスペックの指示をいただくことも多いが、そのスペックに応じたバルブを設計し、提案するのは当社の仕事である。それ以上に評価されているのは、当社のコンサルティング機能。バイオや医学研究者など、機械的スペックのとりまとめが苦手な方々には、解決したい課題のみ伺って、当社がそれを試作機のコンセプトまでまとめる。これは、単なる下請けとは全く異なり、同業他社との差別化要素になっている。

Q.どのような理念・想いで事業をやっているのか?

当社のスローガンとして、「広げよう世界へ、つなげよう100年企業へ」を掲げている。私の考えとしては、まず企業として存続する、従業員に安定的な給料を支払うことが大前提にある。100年企業を目指すにあたり、日本市場は縮小の一途を辿っているため、世界に通用するバルブを作っていきたい。これは、創業者である父も同じ考えであった。当社の製品は既にNASAやMIT、ハーバードなどに採用の実績を持つが、世界中で益々使われることを目指している。

Q.人材面の強みは?

当社の事業面の強みとして「カスタマイゼーション」を挙げたが、顧客の求めるスペックに応じて製品を作り上げるのは簡単な仕事ではない。実際、年間で400図番もの新製品が設計されており、1日2図番が生み出されるほどのスピード感で仕事をしている。そのため、頭を使いたくない人材には当社はマッチしておらず、お客様から要求される難しい課題に挑戦し続けられる人材を採用している。

当社で活躍している社員は大きく3パターンに分類できる。まずは、当社のコア人材として活躍している技術系人材。これを社内では、愛情を込めて「オタク系人材」と呼んでいる。これは、幼少期からプラモデルを作るのが大好きだったような社員であり、当社の技術力を支えている。二つ目は、「グローバル人材」であり、TOEICのスコアが900点台の社員が5〜6名ほど在籍している。彼らは海外の取引先に対する提案やコンサルティングを担当している。三つ目は、「リーダーシップ人材」であり、オタク系人材やグローバル人材を統率するためのマネジメントに長けた人材だ。しかしながら、当社ではリーダーシップ人材が不足しており、今後はその採用を強化していきたい。

Q.今後のビジョンは?

当社の顧客は、現在、分析業界への依存度が高すぎるため、販売先を多様化させていきたい。そのために、非分析業界での新規事業立ち上げを進めており、それが「再生医療分野」と「航空宇宙分野」だ。

Q.今後の課題は?

第一に、リーダーシップ人材の育成だ。リーダーシップ人材を育成するためには、リーダーとしての体験が必要であり、そのような機会を創るために、事業部の分社化、米国現地法人の設立を検討している。それにより、経営リーダーの養成、企業としてのリスク分散を図りたい。

第二に、事業承継に向けた経営者の育成だ。私は、現在57歳であり、60歳で社長を退くことを決めているため、あと3年で後継者を育てる必要がある。また、分社化時にも複数の社長が必要となる。

第三に、製造原価率が年々増加しているため、生産技術の強化と少量多品種に対応できるプチ自動化が重要となる。デジタル技術によるチェックを強化し、ヒューマンエラーをなくしていきたい。人間主導の生産体制が主体となるが、デジタル化を徐々に進めていくことが課題となる。

Q.求める人物像は?期待する役割・成果は?

失敗を恐れず、新しいことにチャレンジすることが好きな人材を採用していきたい。当社では、人財ビジョンとして、「なぜ?」を考え、協調して行動すること、受け身でなく自律的に行動することを掲げている。

期待する役割については、それぞれ異なっており、「オタク系人材」であれば、新しい製品を次々と作ってもらいたい。「グローバル人材」であれば、当社がグローバルニッチトップを目指していくにあたり、顧客先へのコンサルティングを英語で担ってもらいたい。また、「リーダーシップ人材」であれば、マネジメントやチームリーディングを担当してもらい、将来社長をやってもらいたい。

会社概要

会社名高砂電気工業株式会社
事業内容ソレノイドバルブ(電磁弁)およびポンプを中心とした流体制御機器等の設計・開発・製造・販売
代表者名浅井 直也
代表プロフィール1960年生まれ。1983年名古屋大学法学部を卒業後、日本放送協会に入局。1992年高砂電気工業(株)に入社。2002年に代表取締役社長に就任して現在に至る。
沿革1959年 名古屋市中区板橋町2-1で高砂電気工業を創立
1963年 個人経営を法人格とし高砂電気工業株式会社と改称
1980年 テフロン電磁弁がISCO社(アメリカ)に採用され、輸出を開始
2003年 中国江蘇省蘇州市に高砂電気(蘇州)有限公司を設立
2012年 米国マサチューセッツ州に支店開設

本社所在地〒458-8522
愛知県名古屋市緑区鳴海町杜若66番地
年商27億6900万円(2016年9月期実績)
従業員数234名(2017年7月時点)
URLhttp://takasago-elec.co.jp/