海外進出、新規事業を進める金属スクラップのリサイクル会社

新英ホールディングス株式会社 代表取締役社長 金子 豊久 様

Q.社長就任時の想いは?

当社は私の祖父が創業した会社であり、私で4代目になる。私が社長に就任したのは、リーマンショックの翌年であり、当時42歳だった。就任時はやはり大きな責任を感じたが、これ以上の底はなく、あとは上昇していくだけだと考えていた。その反面、金属はカーボン素材に代替されていくなど市場の厳しさが増す中で、いかに経営の舵取りをしていくか、大きな危機感も抱いていた。

Q.どのような事業を行っているのか?

中核会社となる「新英金属」では、金属のリサイクル事業を展開している。鉄やステンレスをはじめ、グループ会社には、銅やアルミなどの非鉄金属、さらに特殊金属まで、あらゆる金属のリサイクルに対応している。商流としては、自動車部品メーカーなどから金属スクラップを仕入れ、当社で加工し、電炉メーカーなどに販売するという流れだ。現在、9工場を保有しており、年間75万トンのスクラップを取り扱っている。

また、「新英運輸」という物流専門会社を通じて、金属スクラップの運搬を行っている。東海地区最大級のトラック保有台数、さらに、各種車両、搬出機械を配備している。

更に、「新英エコライフ」という廃棄物処理会社を通じて、お客様の工場で発生するリサイクルできない廃棄物や、金属スクラップ加工時に発生する廃棄物の処理にも対応している。

Q.お客様から選ばれる理由は?

まずは、当社への信頼だと考えている。作業の安全性や緊急時の対応力には自信があり、お客様からの信頼は厚いと自負している。また、グループ会社に新英運輸があり、トラック100台以上を保有する機動力があることも、強みになっている。更に、東海地方において広域的に工場を保有していることにより、様々な地域のお客様のご要望にお応えできる。

Q.どのような理念・想いで事業をやっているのか?

私たちは、金属スクラップのリサイクル会社として、「製造業の縁の下の力持ち」だという認識を持っている。表舞台の製造メーカーに輝いて頂くために、当社は裏舞台でスクラップを回収・加工・再利用している。当社は表舞台には現れない存在だが、世の中に絶対になくてはならない仕事だという使命感を抱いている。

Q.組織面、人材面の強みは?

まずは、未来に向けた人材採用・人材育成に力を入れてきたことだ。そのため、営業に限らず層が厚く、当社の未来を担う人材が多く活躍している。

二つ目は、現場研修とジョブローテーションによって、仕事に繋がりが生まれていること。事務職も含め、新入社員には1年間の現場研修を課している。また、配属後も、1部署だけの経験でなく、現場、営業、総務、生産管理など、様々な部署を経験するジョブローテーションを徹底している。この制度によって、各部門間の連携が促進され、また、社員一人ひとりの成長にも繋がっている。

三つ目は、家族経営を心掛けており、暖かくアットホームな社風が特徴で、離職率が低い。

Q.業界の環境変化をどのように捉えているか?

人口1人あたりの鉄の使用量は概ね決まっているとされている。人口減少により鉄の使用量は減っていくだろう。また、素材変化も大きいと考えている。代表的なものとして自動車業界のアルミやカーボンなどへの代替だ。このように市場が縮小していくことは、大きな脅威である。加えて、自動車関係が事業全体の60%を占めていることにも先の説明のとおり大きな危機感となっている。

また、産業廃棄物処理会社など異業種による業界への新規参入も脅威だ。そのような脅威に対して、当社としては、産業廃棄物事業も含めた「総合リサイクル企業グループ」としての事業展開を進めている。

一方、同業者の廃業が増えることも予想されるが、これは、当社にとっては、M&Aも含めて事業拡張のチャンスとなる。

Q.韓国進出の狙いは?

海外進出を行うにあたり、文化・風習が日本と似ている国として、候補に上がったのが韓国だった。韓国であれば、日本で培った経験・ノウハウが活きると考えた。そして、2011年に「Shin-Ei Metal Korea」を現地パートナーと合弁で設立した。その後、順調に韓国での取引量を増やすことに成功したため、2015年には100%自社の現地法人として、「Shin-Ei Korea」を設立した。

一方で、韓国への進出には苦労もあった。それが、労使関係だ。日本側と韓国側で労使のあり方が全く違った。韓国企業では50歳になると首を切られることが多く、その分、若い時の給与水準は高く、50歳まで右肩上がりである。当社は、家族経営を標榜しており、長期にわたって働いて頂けるような賃金体系になっている。そのような賃金体系の違いに対して、理解を得ることは難しかった。

Q.新規事業については?

現在、介護事業の立ち上げを進めている。当社のDNAには、「世の中に必要とされる事業を行う」ということが脈々と受け継がれている。これは、祖父が起業した際に、「世の中に必要とされることをやる」という考えの下、鉄くず事業と葬儀事業を検討したという背景がある。介護事業も、金属リサイクル同様、世の中に必要とされる事業だと考えている。

具体的には、リハビリ型のデイサービスを検討しており、まずはフランチャイズとして参入する予定だ。怪我や病気をされた人が、健全な状態になって通常の生活に戻っていただくという事業コンセプトは、当社のリサイクル事業と通ずるものを感じ、2018年4月の開業に向けて準備を進めている。

Q.今後の課題は?

まずは、金属リサイクル事業において、更なる海外進出を進めたい。しかしながら、海外志向の社員が少ないため、グローバル人材の採用や育成に力を入れていきたい。

また、新しい事業機会を自ら見つけ、行動できる人材が少ないことも課題だ。既存事業を上手くこなすことはできるが、既存事業の延長線上にある新しい事業機会を発見し、リーダーシップを発揮して事業化を進めてくれるような人材を育てていきたい。当社には、毎日のように良い素材が入ってきており、そこは宝だと思っている。しかし、それらを最も収益性の高い方法で販売できていない。当社には、新しいことに挑戦できる環境はあるので、是非そこにチャレンジしたいという人材を発掘していきたい。

会社概要

会社名新英ホールディングス株式会社
事業内容・金属スクラップ(鉄及び非鉄金属)の購入・加工及び販売
・産業廃棄物の再生処理
代表者名金子 豊久
代表プロフィール愛知県出身。名古屋学院大学卒業後、アメリカに留学。帰国後、新英金属に入社。その後2009年に代表取締役社長へ就任。
沿革1939年 創業者:金子新一が金子商店を開業
1953年 新英金属株式会社を設立
1969年 新英運輸 有限会社(新英運輸株式会社の前身)を設立
2011年 韓国にShin-Ei Metal Korea株式会社を設立
2014年 韓国にShin-Ei Korea株式会社を設立
2015年 タイにSIAM SHIN-EI METAL CO.,LTD.を設立
2016年 安城チップ工業株式会社の社名を新英チップ株式会社に変更
2016年 新英ホールディングス株式会社を設立
本社所在地〒446-0072
愛知県安城市住吉町三丁目12番1号
URLhttp://www.shineikinzoku.co.jp/