子供たちの自己肯定感を育むマンツーマン個別教室

株式会社セレクティー 代表取締役 畠山 明 様

Q.学校での教育の仕方に疑問をもっても、起業という行動を起こす先生はほとんどいない。なぜ起業したのか?

実家が商売をやっていたこともあり、元々事業に興味があった。そうでなければ、教員を続けていたと思う。また、学校の教員をしていた当時、担当していたクラスで学校を休みがちな生徒がいた。この生徒のために1対1で授業ができたらなというおもいがあった。学校ではそれができないので、起業してそれをやるという選択をした。

Q.個別指導塾は他にもあるが、アップルの強みは?

「アクティブラーニング」という言葉が出始めているように、自発的に学びたいという子どもの意欲を大切にしながら学習支援を行ってきた。「自己肯定感」というキーワードを大事にしてきた。それが保護者の方のニーズに合っていたと思う。

これまでの塾は成績を上げることに着目していた。私たちもそれは大事にしているが、子どもたちは、受験が終わっても、次の受験や就職など、やる気を維持していかなければいけない。受験だけで燃え尽きてしまう子どもたちが大勢いる中で、燃え尽きない持続性のあるやる気とは何なのかということを、社外の学会に参加したり、社内でも研修を行ったりして、研究してきた。

私たちは、「マンツーマンによる共有体験により、自己肯定感を育むこと」が大事だと考えている。子どもたちは、学校で孤独になったり、不登校になったり、いじめたり、いじめられたりすることが多くあるが、信頼している講師との良い共有体験ができると、そういう負のスパイラルから抜け出せるきっかけになるかも知れない。それを私たちのノウハウとして提供している。

また、アップルの生徒は、勉強の苦手な子も在籍している。授業のスピードが一般の学習塾では合わないという理由で、1対1の個別指導を行うアップルに来られるお子さんが多い。勉強に苦手意識を持ってしまうと、自信を喪失してしまう。そのため、アップルでは、自己肯定感の醸成を目的としたシートを活用して子どもの指導に当たれるように講師を育成している。自己肯定感を育てることは、受験勉強のためだけではなく、その後の生きる力にもつながる。

Q.「自己肯定感を育む」などの教育方針は、いつ磨き上げられたのか?

教員時代にも、自己肯定感などの言葉は知っていたが、実際それをどう高めたらいいのかはよく分からなかった。起業してから、それを勉強するようになった。今も勉強を続けているが、マンツーマンによる共有体験によって、自己肯定感を育む教育こそ、民間でやるべきことだと感じている。

Q.創業以来20年、成長を続けている理由は?

経営者としては、トップダウン型というよりは、ボトムアップ型の経営を考えながらやってきた。なるべく若いスタッフに、委ねるようにしてきた。私は性格的にのんびりしているので、社員が失敗しても許容してきた。フィードバックはするが怒ったりはしない。それが従業員の意欲を削がずにやってこられた要因だと思う。それは弱みにもなるが。

Q.どのような局面において、それが弱みになるのか?

そのせいで、新規出店のスピードが同業者と比べて遅くなっている。社長の指示の下、トップダウンで新規出店を決めて実行していくというスタイルであれば、新規出店のスピードはもっと上がると思う。しかし、社員のやる気、成長を見ながら出店を考えていくと、あまり早いスピードで出店できない。その結果、出店スピードが遅くなっているが、逆に撤退もしていない。良くも悪くも、成長のスピードが緩やか。

Q.事業の状況は?

事業面では、毎年少しずつ、できれば10%ずつスモールステップで成長することを目指してやってきた。幸いなことに20年間、その目標を達成してきた。出店スピードは決して早くないものの、撤退することなく、着実に少しずつ出店し続けてきた。それが成長に貢献している。とはいえ、少子化で市場環境はとても厳しいので、それを毎年達成するためには、予実管理も含めて真剣に取り組んでいく必要がある。

Q.人材面での強みは何か?

正社員に関して言えば、そもそも教育に関心があり、当社の理念に共感して入社してきている人しかいない。それが強みになっている。結婚、引っ越しなどのライフイベントが理由で退職する社員はいるが、会社のことが嫌いになって辞めていく社員はいなかったように思う。また、教室長に見合う人材が育っている。若くても教室長を目指そうという人材が毎年入社してきている。これが、事業面の強みにもつながっていると思う。

Q.一般財団法人 学習能力開発財団とは?

一般財団法人 学習能力開発財団では、講師の育成、発達障がい児、震災遺児への学習支援を行っている。以前は、社内だけで講師研修を行っていたが、講師の育成を事業としてやっている法人が見当たらなかったので、同法人を立ち上げた。

また、発達障がいのあるお子さんをサポートするための研修プログラムを用意している。発達障がいのあるお子さんの場合は、1対1で寄り添い、個別にサポートしていく必要があるので、専門的な指導ノウハウを身につける必要があるからだ。

Q.今後のビジョンは?

家庭教師派遣を始めて10年経って、個別指導を始めた。個別指導を始めてから10年経った。当社は、おおよそ10年おきに新しい事業の柱を創ってきたが、次の10年は、私たちの強み、リソースを生かして、大人向けの教育サービスを展開したい。

日中の時間帯を使って、大人向けの教育サービスを展開することによって、意欲や能力が高い女性社員が、日中に働くことができるようになり、結婚後も働きやすくなるというメリットもある。

Q.課題は何か?

全ての講師に対して、当社の理念をもっと浸透させていく必要がある。そのためには、昇給・評価、教育の仕組みづくりを行っていく必要がある。

また、少子化に伴い市場規模は急速に縮小していくので、経営的には、収益性を高めていく必要がある。そのためには、収益性に責任をもって行動できる幹部社員が必要になる。

Q.学校を中心とする日本の教育システムについては、どのように考えているか?

アップルでは子ども達の教育に携わる上で、一人ひとりの良さを生かす「ダイバーシティ」を大切にしてきた。それに対し、学校ではダイバーシティ型の教育は十分にできていないと感じている。

宮城県は、残念ながら、不登校・いじめの発生率調査で極めて高い県となっている。学校生活において、多忙を極める教師が、子どもたち一人ひとりと向き合っていける環境づくりは急務と考える。当社は民間企業なので、ほんの一部の子ども達としか向き合うことはできないが、官民で一体となって、ダイバーシティ重視の教育体制を実現して欲しいと願っている。そうでないと、日本の子どもたちの良さは活かされなくなってしまうのではないかと危惧している。

会社概要

会社名株式会社セレクティー
事業内容アップル教育グループ(「個別教室のアップル」「家庭教師のアップル」)として、1対1に特化した教育サービスを行う総合教育サービス事業
代表者名畠山 明
代表プロフィール1968年宮城県生まれ。東北大学大学院修了。公立学校で教員として勤務したのち、一人ひとりのニーズにあわせた教育サービス事業を1996年に創業。現在223名の講師による教育事業を行う。また、これまでの20年以上の学習支援ノウハウを、著書「やる気のモト。」や年間50回ほどの講演を通じて伝える活動を行っている。個別教室のアップル・家庭教師のアップル代表。一般財団法人学習能力開発財団・理事長。
沿革1996年 学習支援遣事業を開始
2005年 人材育成事業を開始
2006年 発達障がい児支援など専門的なスキルを持つ教師派遣事業を開始
2011年 東日本大震災 震災遺児支援開始
2011年 一般財団法人 学習能力開発財団 設立 
2014年 経済産業大臣表彰「ダイバーシティ経営企業100選」受賞
本社所在地〒980-0021
宮城県仙台市青葉区中央 3-1-24  荘内銀行ビル 5階
年商非公開
従業員数30名(249名:講師含む全スタッフ数)
URLhttp://www.apple-kobetsu.jp/