障害者の就労移行支援を行う仙台発ソーシャル・ベンチャー

株式会社manaby 代表取締役社長 岡﨑 衛 様

Q.起業の経緯・理由は?

大学入学後すぐに、障害者の就労支援を行うソーシャル・ベンチャーにてインターンを経験した。その後、2009年に株式会社ユニークアイを創業し、障害者の就労支援事業を開始した。これまで、障害者の支援を行う中で、障害者の方が就職しても、入社後にすぐ辞めてしまうケースを何度も見てきた。職場における障害者への理解・配慮が足らず、人間関係が原因で辞めてしまうことが多い。障害者の方にとっては、「自分らしく働ける働き方」でなければ、長期にわたり働くことが難しい。そこで、「自分らしく生きることのできる社会を創りたい」という想いを持って、株式会社manabyを設立した。現在は、manabyでの事業を中心に活動している。

Q.どのような理念・想いで事業をやっているのか?

「自分らしく働くことのできる社会を創りたい」という理念を掲げている。現在は、障害者を対象とした就労移行支援事業を展開しているが、将来的には健常者を含め日本全国の方々を対象としながら、「自分らしく働き、自分らしく生きていくことのできる社会」を広めていきたいと考えている。

Q.現在、日本全国に障害を持たれている方は何名ほどいるのか?

現在約780万人の障害者がいると言われ、これは、日本の人口の6〜7%にあたる。その障害はさまざまで、身体障害、知的障害、精神障害などに分類される。manabyで就労支援を受けている方の多くは、車イスで生活をする身体障害の方や、うつ病等の経験を持つ精神障害の方となっている。

Q.事業内容は?

障害者の就労移行支援事業については、宮城と神奈川に4事業所を構え展開している。就職先を探している障害者の方々に対し、仕事スキルの訓練・就職先の紹介をサービスとして提供している。加えて、入社後の定着サポートについても、就職先の企業と障害者の間に立って支援している。昨年6月の創業以来、現在利用されている方を含め、これまでに約100名の就労支援を手がけており、現在では、継続して利用されるお客様を含めて約70名のサポートをしている。現在、東京や宮城に拠点を構える企業から約40件の求人案件を抱え、一人ひとりにあった働き方の提案を行っている。

Q.障害者の就労移行支援事業について、運営元やビジネスモデルは?

現在、障害者の就労支援サービスは、弊社のように株式会社で運営しているケースのほか、NPOや社会福祉法人が運営している。主な収益源は、国から支給される「訓練等給付費」である。これは、障害者の方が仕事スキルを身につけるための講座を提供することによる訓練費用である。

Q.manabyでのサポート受けた方は、どのような仕事しているのか?

Webサイトの記事作成や事務職など活躍の機会は多岐にわたるが、代表例を挙げると、就職先の企業における採用担当者として、採用HPの運用や企業説明会の運営スタッフとして働いている事例がある。manabyでは、障害者の方の意向に寄り添い、自分らしく働くことができ、かつ長期的な就労の実現を目指している。

Q.障害者の方々はどのようにしてmanabyを知るのか?

かかりつけの病院から当社を紹介される方が多い。また、障害者相談所である「相談支援事業所」や役所から紹介された方、WEBで当社を知られる方もいる。

Q.事業面の強みは?

現状、東北地方では当社だけが、「障害者の在宅ワーク支援」を手がけている。これは一つの強みだと考えている。全国的に見ても、在宅ワークの支援を手がける流れは近年始まったばかりだ。

当社が在宅ワークを推奨している理由として、人間関係のストレスが原因で体調を崩してしまった方々に対して、少しでもそのストレスを減らすことができ、自分のスキルを活かして働くことができるということがあげられる。また、地方では、学んだスキルを活かして、就職できる勤務先が首都圏に比べ少ないこと、住み慣れた土地を離れて首都圏にで働くことは、現実的ではなく、交通のアクセス上、勤務可能なエリア内だけで仕事を探すことが難しいことが挙げられる。

また、障害者の方が、在宅で収入を得ることができるよう、プログラミングやWebデザインなど、ITスキルを高める教育プログラムを重視している。これまで多くの障害者の方が対人関係で苦しんだ経験を持っており、在宅ワークこそハンディキャップを克服し、自分らしく働くことのできる働き方であると考えている。

教育プログラムの内容については、就職を意識した「実践型講座」を多く含んでいる。お客様との対話を通じて得られた現場での課題・問題点を教育プログラムに反映できるよう、毎日社員同士でプログラムの改善会議を継続してきた。

Q.manabyがお客様に評価いただいているところは?

最もお客様の声として多いのが、manabyでは「本来の自分を出せる」というものだ。今までの社会の中では、自分の居場所がなかったり、本当の自分というものを出せずに苦しんでいた方が多い中で、manabyでは、一人ひとりのありのままを受け入れるということを大切にしている。そのため、利用される方は、「自分らしさ」を見つけることができ、その結果、「自分らしい働き方」につなげていくことができる。manabyに入所するまでは、障害のハンディキャップに妥協した働き方しか選択できないと考えていたが、manabyに出会い、自分の希望を叶えてくれる「自分らしい働き方」を実現できるということを理解・体験できたというお客様が多い。

Q.今後のビジョンは?

就職で思い悩む障害者の方は、日本全国にたくさんいる。できるだけ多くの方にmanabyでの体験を通じて「自分らしく働ける働き方」に出会ってもらいたい。そのために、今後は首都圏への事業所拡大を目指している。これは、創業してから、事業所を運営していく中で、各地域から「manaby」を利用したいという声が聞かれ、問い合わせも多数寄せられており、manabyを求める方が全国にいるという実感があったため、より早く、多くの人にmanabyを届けたいという思いからである。

創業して1年経ち、現在のところ宮城、神奈川に4事業所だが、2018年3月までに合計7事業所、2019年3月までに15事業所、2020年3月までに30事業所を目指しており、そのための出店拡大を図る計画がある。今年中に横浜への出店を実現すべく、現在動いている。

Q.今後の課題は?

現在は就職に至るまでの職業訓練が中心だが、今後は就職後の継続的な職業訓練にもサービスの幅を広げ、一人ひとりに寄り添ったサポートの強化を図りたい。就職した方が、就職することがゴールではなく、長く自分らしく働けるよう、定着を支援していくことが必要。

また、今後積極的な事業所拡大を図るにあたり、人材の採用・育成面を強化していく必要がある。一事業所あたり6名の人材配置が必要になってくるため、2018年3月に合計7事業所へ拡大していくためには、約45名の組織体制が必要になる。現在は約20名規模の組織だが、組織の拡大に伴い、人事面の仕組み作りも必要不可欠となってくる。

Q.求める人物像は?期待する役割・成果は?

採用したい人材は、プログラマー、Webデザイナー、広報担当、人事担当と多岐にわたる。当社が共通して人材に求めることは、「考え抜く力があること」、「優しく、強く、賢さをもっていること」だ。

プログラマー、Webデザイナーについて、当社では教育プログラムを自社開発しているため、サービス改善の役割を担ってもらいたい。広報担当については、学生や若手社会人に対する採用力を高めるための広報戦略を検討し実行する役割を担ってもらいたい。人事担当については、組織拡大に伴い必要となる採用・育成面で暗黙知化されているところを仕組みに落とし込む役割を担ってもらいたい。人事担当については、人事経験のある中途人材を求めている。

Q.入社を検討している方へ。当社で働く魅力や価値は?

当社はベンチャー企業でありながら、国からの委託事業として公的な仕事を担っている、社会貢献の大きい「ソーシャル・ベンチャー」だ。障害者は日本全国に約780万人いるとされており、彼らの働き方を大きく変えていくことのできる可能性を秘めているのがmanabyだ。そのような社会的意義の大きい仕事を、裁量権のある環境下でリードできることが当社で働く魅力だと考えている。

Q.経営者としての強みは?

強みは、「人に信用して任せる」ことができることだ。当社は創業1年のベンチャー企業なので、意思決定のスピードが命取りとなってくる。ベンチャーの唯一の強みであるスピード力を十分に活かせるような組織を作れたことが経営者としての強みだ。また、ファイナンスに関する能力も自信がある。事業計画を立て出店拡大していくために、銀行との資金繰り等は全て私一人で切り盛りしている。

会社概要

会社名株式会社manaby
事業内容障害者向け「就労移行支援事業所」の運営
代表者名岡﨑 衛
代表プロフィール昭和62年生まれ。東北大学大学院・経済経営学科在籍中。大学在学中のインターン経験を生かし、2009年に株式会社ユニークアイを設立。その後2016年、株式会社manabyを設立。
沿革2016年 株式会社manaby設立
本社所在地〒983-0852
宮城県仙台市宮城野区榴岡1-6-30ディーグランツ仙台ビル7F
URLhttps://manaby.co.jp/