創業100年のベンチャー企業・自社ブランドを展開する印刷会社

今野印刷株式会社 代表取締役社長 橋浦 隆一 様

Q.ここ数年、新規事業に積極的に取り組んでいるという印象を受ける。印刷業界でここまで次々と新規事業を手がけられる企業はそう多くないのでは?

家庭の事情で今野印刷に入社して、社長に就任したが、既存のビジネスモデルのままでは先がないと感じた。今のままではダメだという危機感があった。今野印刷は100年を超える老舗企業。100年企業だからこそ、イノベーション、新しいことに取り組む姿が大事になる。私が社長に就任して以来、「創業100年のベンチャー企業を目指す」ということを標榜してきた。「ベンチャースピリット」と「100年企業としての誇り」を併せ持って経営していきたい。

Q.グリーティングカード「tegami」のような自社ブランドを立ち上げる印刷会社は多くない。どのような経緯でこの事業を始めたのか?

情報に対するアンテナを磨き続けよう、敏感であろうという意識は常にある。私は印刷業界の中ではアウトサイダーであり、印刷業界で常識と考えられていることを常識と思っていない。従来の印刷業界とは違う感性を持っている。

ことは年賀状ビジネスから始まる。ある商社が、東北地域での年賀状印刷の下請け工場を探していた。「年賀状印刷なんて儲からない」というのが業界の定説だったので、同業他社はその依頼を引き受けなかった。しかし、私はそのような業界の常識を疑ってかかり、話を聞いて、年賀状印刷を受けることにした。結果として、社員の協力もあって成功することができた。

年賀状事業で培ったカード印刷のノウハウを生かして、海外向けのグリーティングカード事業に参入した。JETROから海外進出市場についての情報提供があり、海外で事業を展開するのも面白そうだと思った。当社が海外で何ができるかを考えたときに、年賀状ビジネスで培ったノウハウを、海外ではグリーティングカードで生かせるかもしれないと思った。

新規事業というのは何も突拍子もないことにチャレンジすることではない。基本は自社の事業ドメインの中で磨いたものを少し進化させることで新規事業は生まれると考えている。

Q.グリーティングカード事業を、国内ではなく、まず米国から始めたのはなぜか?

元々、グリーティングカードのメイン市場は、日本国内になると考えていたが、まず海外、特に米国に出すということに意味があると思った。グリーティングカード先進国である米国のバイヤーと丁々発止して商品開発を行っていくことで、デザインのセンスが磨かれる。また、要求水準の高い米国のバイヤーが認めた商品であれば、国内のバイヤーも認めてくれるだろうと考え、まず米国で展開することにした。

Q.話は変わるが、今野印刷の経営を継いだ時は、どのような想いだったのか?

当時、第一生命経済研究所でアナリストをしていたが、その仕事は大好きだった。ニューヨーク駐在の内示が出た頃に、当時の今野印刷の社長(義父)からお誘いを受けた。今野印刷の状態があまり良くないということは察しがついていた。家族を大事にしたいという想いが一番大きかったので、今野印刷を見捨てて、ニューヨークに行くことができなかった。

当時、周囲からは「将来安泰な第一生命経済研究所を辞めることはない」と言われた。しかし、自分でコントロールできる組織の方が意外に安全だと思う。どこに所属しているかは重要ではなく、自分が何をするかの方が大事だ。第一生命経済研究所と今野印刷とでは、業種は全く異なるが、ビジネスの世界でやるべきことはそんなに変わらない。ビジョンをしっかり持ち、仲間を大事にして、戦略を立ててやっていけば、普遍的に成功する。一番大事なのは本人の意思、マインドの部分。それがしっかりしていれば、どこに行ってもやっていける。と考えている

Q.5代目社長としての大変さは?

創業者の場合、社員が自分の子分のようになっていることが多い。右だと言えば、みんな右を向いてくれる。5代目はそうはいかない。社長就任した当時、それぞれのセクションにおいて、私の方針に対する反発があった。部長クラスから一般社員まで、想いを共有できる人もいれば、そうでない人もいる。丁寧に説明して理解を得るしかない。それでも分かってもらえない人は、辞めていった。それは辛かったが、仕方ないことでもある。それでも、当時在籍した50人くらいの社員のうち、3割くらいは今も在籍してくれている。

Q.橋浦社長の右腕になるような方はいるのか?

私が社長に就任した直後に採用した社員が、今は常務として経営管理を担っている。グリーティングカード事業の立ち上げ、株式会社文洋社のM&Aなどの案件も、執行責任者として推進してくれた。他にも、IT、営業、工場のそれぞれのセクションで、右腕と言えるリーダーがいる。あらゆる業務を現場に任せ、私はなるべく実務にはタッチしないようにしている。

Q.今野印刷の強みは?

毎年ビジョンを発表しているが、それが社員に浸透してきたと感じる。理念は、「お客様に必要とされる会社であり続ける」ことだが、社員一人ひとりがその意味を理解し、自分の言葉で話せるようになり、また、無意識に行動できるようになってきた。その意味で、社長のビジョンが社員に浸透し、「今野印刷イズム」と呼べるほどの社内文化が醸成されつつあると感じている。特に、納期が迫っているときのチームワークは素晴らしい。こうした姿勢が、お客様から信頼されている。それが当社の最大の強みである。

また、毎週朝礼をやっており、社員との対話を大事にしている。「お客様の信頼を勝ち取るためにはどうするのか?」、「事故が起きたときにどのような対応をするのか?」など、なるべく具体的なケースに当てはめて話をしている。

しかしながら、イズムの浸透は、まだ十分だとは思っていない。それをより強固なものにしていくためには、係長クラスの社員が、私の代弁者として役割を果たせるようになる必要がある。

Q.印刷会社を取り巻く脅威は?

一つは、印刷需要が減退していることだ。SNSやAIが発展・進化していく中で、我々が媒体と言っている紙やWEBがどこまで残るのか、決して楽観的には見ていない。もう一つは、技術革新があまりにも早すぎることだ。技術革新に対応するためには生産設備への投資が必要になるが、その投資額は1台あたり数億円にもなるため、その投資判断は極めて重要な意味を持つ。

Q.今後の経営戦略は?

印刷会社として、お客様の課題を解決する「印刷コンシェルジュ」、「印刷プランナー」と言えるような価値を提供していきたい。お客様との接点を深め、お客様が印刷を検討し始めた時点から相談に乗り、一緒に企画を練っていくような関わり方をしていきたい。

また、最近、地方創生のコンサルティング会社(株式会社プロジェクト地域活性)を買収した。地方自治体は、地方創生をテーマにしたセミナー、イベント、メディアを数多く手掛けており、その都度、印刷物の需要が発生する。同社を傘下に収めたことにより、地方自治体に対して、地方創生のコンサルティングから印刷物のプロデュースまで、ワンストップでご支援できるようになる。地方自治体向けの事業を今後強化していきたい。

 

会社概要

会社名今野印刷株式会社
事業内容・販促支援ツールの企画・製作・印刷
・グリーディングカードの自社ブランド「tegami」の製造・販売
代表者名橋浦 隆一
代表プロフィール大学卒業後、株式会社第一生命経済研究所を経て、1999年、今野印刷株式会社に入社。2000年5月、当社・代表取締役社長に就任。
沿革明治41年 東北新聞社より設備一式を譲り受け、仙台市南鍛冶町に設立する。 
平成14年 コンビ二向け年賀印刷事業開始
平成20年 創立100年 
平成25年 株式会社文洋社完全子会社化
本社所在地〒984-0011
宮城県仙台市若林区六丁の目西町2-10
年商非公開
従業員数49名(平成28年1月現在)
URLhttp://www.konp.co.jp/