新規事業にも果敢に挑戦する地域密着型スーパーマーケット

株式会社いちい 代表取締役 伊藤 信弘 様

Q.どのような理念・想いで事業をやっているのか?

「郷土を愛し、お客さまと共に歩み、共に伸びる」という企業理念を掲げている。先代の経営者達は、どちらかというとトップダウン型の経営を行ってきた。それも必要なことだが、私は、スタッフたちの想いを集めて、会社作りをしていきたかった。そこで、当時の経営幹部、店長などを集めて合宿を行い、「我々が目指すところは何なのか」を徹底的に話し合った。スタッフたちには、「情熱をもって伸びていきたい」、「未来永劫続いて欲しい」という想いがあった。経営を継続していくことが、スタッフに安心感を与え、スタッフもそれを望んでいることが分かった。それを基に、企業理念が出来上がった。

Q.いちいに入社された当時、どのような問題意識を持たれていたか?

私がいちいに入社した当時はバブル以前で、「成長するぞ。スーパーも伸びるぞ」という雰囲気があり、私は「株式公開したい」と考えていた。株式公開できる会社になるということは、信用される会社になるということ。そうすればスタッフたちも安心できると考えていた。また、当時は「スーパーは店舗数を増やさなければ成長しない」と考えていたが、店舗開発にはかなりお金がかかるため、スピード感を持ってそれを進めていくためには、株式公開が必要だと考えていた。しかし、社内からは株式公開に対して反対の声が多く、断念せざるを得なかった。私としては、それが不満だった。例え株式公開しなくても、株式公開できるような会社を目指したかった。そのような経緯があり、私が社長になったらオープンな会社にしたいと考えるようになった。

Q.今後のビジョンは?

私が社長に就任した当時、年商は100億円を超えていたが、私は200億円にしたいと考えていた。1店舗当たりの売上を12億円として計算すると、その目標を達成するためには、あと6店舗を開発する必要があった。そこで私は、遮二無二店舗開発を進めようとしたが、当時は売上の拡大ばかりで、収益性の追求が疎かになっていた。儲けをしっかり出せる事業基盤がないと、競合にひっくり返されることが分かってきた。ただ闇雲に店舗数を増やしても、中身の伴う経営計画を立てなければ持続的な成長はできないという反省をした。年商200億円は、自分自身の目標として何とか達成したいという想いがある。私は、「来期の目標を確実にクリアしていこう」、「予算は必ず達成していこう」という社風作りをしていきたい。

Q.今後も事業の中核はスーパーマーケットなのか?

事業規模からすれば、スーパーマーケットが中核であることに変わりはない。従って、スーパーマーケット事業は、更に磨きをかけていく。震災後は、他の地域から福島への出店が少なく、ある意味で守られていたと言えるが、震災から6年が経ち、今後は他地域からの出店も増えてくるだろう。その意味では、守りの姿勢だけではなく、攻めの姿勢で更に店舗数を増やしていきたいという想いはある。

しかし、次なる一手については、考えていかなければならない。もしかしたら、それを形にするのは次世代かも知れない。私は社内からの反対を押し切って、様々な新規事業を立ち上げてきた。失敗もあったが、会社の土台になっているものもある。次の世代が新しい事業の立ち上げを進めていく際に、私が経験したのと同じように、社内から反対されることもあるだろう。新しい挑戦をするためには、それを押し切ってでも進めていこうという情熱が必要だ。

Q.スーパーマーケット事業の強化について、具体策は?

美味しいもの、食文化をお客様にお伝えするのが、我々スーパーマーケットの仕事であり、それを行うのは人だ。社員とパートタイムのスタッフ(パートナー)の想いをどう高めていくかが重要になる。以前は、社員を教育してから、パートナーを教育するというやり方であったが、ここ数年、パートナーから高めていくというボトムアップのやり方に変えた。その結果、お店が変わってきたと感じる。価格での勝負には限界があるため、どのように価格以外の価値を高めていくかという改革を社内で進めている。

Q.スーパーマーケット「いちい」の強みは?

出口調査を行うと、鮮魚は必ず評価が高い。「いちいのお刺身は鮮度がいい」と言ってくださるお客様が多い。創業が魚屋なので、鮮魚部門は力を入れており、花形でいて欲しいという想いがある。お客様に喜んでいただくために、様々な産地のお魚を仕入れている。お客様に「いちいのお魚は鮮度がいいね」とか「こんな食べ方を知らなかった」と言ってもらいたいという想いがある。これは、鮮魚に限らず、青果、肉も含めて、生鮮全般に言えることだが。

また、お酒もお客様からの評価が高い。「酒蔵」というお酒のディスカウントストアを展開しており、地域のお客様からは、お酒を安く買えるお店として好評を頂いている。

Q.人材教育に向けての取り組みは?

社員教育にはお金と時間をかけて注力している。社外のコンサルタントをかなり早い時期から活用している。独立系のスーパーマーケットなので、外部の専門家から新しい情報やノウハウを取り入れて、人材教育、人作りを行っている。

数年前からは、店舗ごとに、「接遇」、「商品の売り込み方」、「経費削減」など、5つのテーマで改革プロジェクトを進めている。パートナー、社員、管理職など、あらゆる階層に参加してもらい、テーマごとに、様々な取り組みを行っている。また、各店舗で取り組んだ成果を発表するような研修も行っている。それらを教育の場と位置付けている。

幹部候補社員の育成については、部長や課長クラスは多方面で数多くの改革に率先して関わっているため、将来の会社を担う人材として期待している。当面は、プロジェクトベースの幹部育成の仕組みを確立していきたい。

Q.新規事業に対するスタンスは?

私は新しいことにかなり積極的だ。インターネットでモノが変えるようになり、スーパーマーケットはなくなるのではないかという危機感が常にあった。また、ふるさと納税は、所得の高い人たちが産地から直接買うことができる仕組みであり、これも脅威だと感じている。そのような危機感から、ネットショップや移動販売車など、新しい事業にたくさんチャレンジしてきた。失敗もしてきたが、アンテナは常に高くしているつもり。今後は、若い世代に、失敗を恐れず、どんどん新しいことに挑戦して欲しいと考えている。

また、ネットショップは店舗よりも、お客様のニーズの変化を早く知ることができるので、スーパーマーケットの経営にも生かすことができると感じる。

Q.今後の課題は?

社員のキャリアプランに合わせた自己実現をサポートできる会社でありたいと考えており、そのための仕組みづくりを整備する必要がある。例えば、子育ての支援など。いちいに縁があって入社してくれた社員に寄り添い、いちいで働くことに誇りを持てるような会社でありたい。

会社概要

会社名株式会社いちい
事業内容・スーパーマーケット事業:「いちい」、「FOUR'S MARKET」
・ペットショップ事業:「ペッツ・マム」
・外食事業「モスバーガー」、「まいどおおきに食堂」
・ネット事業:酒専門ネットショップ「ワイン紀行」、 ネットショップ「ペッツ・マム」
・移動販売事業:移動スーパー「とくし丸」
代表者名伊藤 信弘
代表プロフィール専修大学経済学部卒業後、1980年に萩原商事株式会社シズオカヤへ入社。1983年、株式会社いちい入社。2003年、代表取締役社長就任。
沿革1892年 海産物商として開業
1973年 株式会社いちいに名称変更
1994年 パワーデポ食品館、スーパードラッグ&リカーズ館同時開店
2000年 本社及び物流センター新築移転
2014年 移動スーパー「とくし丸」運営開始
本社所在地〒960-2101
福島県福島市さくら一丁目2番地の1
年商161億7000万円(2014年度)
従業員数1296名
URLhttp://www.ichii-yume.co.jp/